イベントやスポットなど、新たなムーブメントの「仕掛け人」にインタビュー。 インタビュー愛知豊橋市


 
休日は家族連れやカップルで賑わい、おでかけスポットとして人気の動物園。ライオンやキリン、ゴリラなど動物たちを身近で見られるのが楽しみですが、実はその人気動物のほとんどが絶滅危惧種だということを知っていますか?30年後、50年後、100年後……、もしかしたら地球から姿を消してしまう人気動物がいるかもしれないのです。
 
そんな絶滅の危機に晒されている動物たちの現状を多くの人に知ってもらう「絶滅動物園プロジェクト」の活動を通して、未来の動物園のあり方を模索している佐々木シュウジさん。
 
これまでに「東山動植物園」「上野動物園」の絶滅危惧種を紹介する読み聞かせ写真集「絶滅動物園」を出版。2021年夏には佐々木さんの地元・豊橋市にある動物園「のんほいパーク」で撮影した第3弾が発売予定です。今回は、「絶滅動物園」出版への思いや「絶滅動物園プロジェクト」の展望などについて佐々木さんにお話を聞きました。
 

↑絶滅動物園プロジェクト・プロデューサーの佐々木シュウジさん。
 
― フリーのコンテンツプロデューサーとして働いていた佐々木さんが「絶滅動物園プロジェクト」をはじめることになった経緯を教えてください。
佐々木:広告会社などに勤めていて、37歳で独立しました。独立後はそれまでの人脈で仕事を依頼してもらったりしていたんですが、次第に「世の中の人がおもしろがってくれることを自ら発信していきたい」と思うように。私自身ウイスキーが好きなこともあって、スコットランドの蒸留所を旅して蒸留所のある風景を紹介する写真集を出版したことがきっかけで、興味のある1テーマでコンテンツをつくることに自信が持てたんです。
 
― 佐々木さん自らがおもしろいと思ったことを発信し、仕事にしていったんですね。
佐々木:成功体験が増えていくにつれて、自分がおもしろいと思うことに加えて、社会的に意義のある企画をやってみたい!と思うように。そこで長年温めていた「絶滅動物園プロジェクト」を実行することにしたんです。
 

 
― “長年温めていた”というのは?
佐々木:実はこのプロジェクトは、2016年に第1弾の写真集を出版する前の2010年から活動していました。過去には番組提案として、また絶滅した動物たちを4Kなど現代の最新テクノロジーで蘇らせ、CG・映像化する「絶滅動物園」の事業企画を提案したこともあるんです。そのときは「タイトルがキャッチーだし内容もおもしろい」と好感触だったものの、放送する枠がなかったり、予算がなかったりして実現には至りませんでした。
 
― もともと写真集ではなく、CGや映像化を目標にしていたんですね。そこでなぜ写真集を出版することになったのでしょうか。
佐々木:当初の目標は映像化でしたが、絶滅動物のことを調べていくうちに15世紀以降に絶滅した動物は、絶滅の原因が人間にあることが分かったんです。例えば体重が10トン以上もあったと言われるステラーカイギュウというジュゴンのような動物がいました。北極海に生息していましたが、難破した船員たちに1741年に発見され、その後その大きな体目当てに狩りつくされ1768年に絶滅します。たった27年しか生存記録がない。大きなショックでした。大航海時代以降は人間の拡大・侵略の中で多くの動物たちが絶滅していく。今なお続く「第6の大絶滅期」と言われるゆえんです。この事実を多くの人に知ってもらう第一歩としてまず「絶滅動物園」という名前をデビューさせること。その手段が写真集だったんです。
 

↑環境省が絶滅危惧種をレベル別に分類した「レッドリスト・カテゴリー」。
 
― なんと悲しいエピソード……。ほかにも人間の犠牲になって絶滅した動物はたくさんいたんですか。
佐々木:現在生息している絶滅危惧種もそうなんです。ホッキョクグマは北極の氷が溶けてしまえば住む場所を奪われてしまう。カワウソは汚染された川では生きていけない。動物は生きる環境を変えることができないんです。しかし唯一生きる環境を変えられる動物がいる。それが人間です。「絶滅動物園」はそんな動物たちの現状を知ってもらい、人の意識を変えるきっかけを提供するプロジェクトだと思っています。
 

(c)豊橋絶滅動物園制作委員会、松本幸治
↑「のんほいパーク」でも人気のスマトラオランウータンは、レッドリスト・カテゴリーで絶滅危惧種のカテゴリーが3つありますが、その中でも一番深刻なカテゴリー(CR:深刻な危機)に分類されています。
 

― なるほど。「なんとしても絶滅危惧種の現状を伝えたい」という思いがあったんですね。これまでに出版した2冊はどのような反響がありましたか。

佐々木:子どもと一緒に読んでくださる方が多く、「東山動物園」の写真集を読んだ子どもが「この本に載っている動物、全部見たい!」と今までより動物に興味をもつようになったと親御さんから言っていただいたりも。動物園をめぐる際に、「この動物が何十年後かにはいなくなってしまうかも」と思うだけで、動物たちの見え方も変わるし、環境への意識も変わっていくと思うんです。

 

↑これまで佐々木さんが出版された2冊の写真集。
 

― 第3弾では、なぜ撮影場所に「のんほいパーク」を選んだんですか?
佐々木:
もともと生まれ育った地元に貢献したいという思いがある一方で、東山動物園や上野動物園に比べて動物園としての全国的知名度が低く、実現できるのかという心配もありました。「絶滅動物園」に共感してくれた豊橋市職員の伊藤紀治さんや元豊橋商工会議所青年部会長の鬼頭秀幸さんにもプロジェクトのメンバーに加わっていただき、なんとかクラウドファンディングを成功させることができました。
 

↑2021年夏に発売予定の「豊橋絶滅動物園」の表紙イメージ。

 
― 子どもたちのためにも、未来の地球にも動物や動物園を残していきたいですね。今回の出版にあたって「のんほいパーク」ならではの魅力について教えて下さい。
佐々木:
「のんほいパーク」は展示スペースが広いため、キリンが駆けたり、シマウマが群れをなして走ったり、またアジアゾウが水を飲みに思いっきり移動したりと、動物らしさをふんだんに見ることができます。動物園は本来、種の保全保護を目的としているため、動物たちが野生に近い環境で暮らせることも大事。「豊橋絶滅動物園」は、そんな「のんほいパーク」の良さを存分に詰め込んだムック本になる予定です。

 

(c)豊橋絶滅動物園制作委員会、松本幸治
↑「のんほいパーク」の広大な敷地でのびのびと暮らす動物たち
 
― 確かに動物たちがこれだけ走り回っている動物園って珍しいですね。今後の「絶滅動物園プロジェクト」の展望としては、やはりCG・映像化でしょうか。
佐々木:はい、長年の構想でもあったようにCG・映像化が最終的な目標です。例えばスマートフォンをチケット用デバイスにすると入場カウントが取れる。すると50回目には絶滅動物が近づいてきたり、100回目の入場記念には自分だけにしか見えない動物がCGで見られたり、動物の絶滅を体感したり再現したり。滅びてしまった動物をCGや映像で蘇らせ、動く絶滅動物園を実現させたいです。8Kや5Gなどの技術も発達してきていますし、プロジェクトをともに実現するビジネスパートナーを見つけることが「絶滅動物園プロジェクト」の鍵となりそうです。
 

 
― ありがとうございました。最後に写真集「絶滅動物園」をこれから読む方に向けてメッセージをお願いします。
 
佐々木:まずは、人間が生きているだけで動物たちを苦しませていることがたくさんあることを知っていただきたいです。全部をいきなりやめることは難しいですが、その事実を知ることで、毎日の暮らしの意識が変わってくるかもしれない。この写真集がきっかけとなり、少しでも地球のことを考えたり、動物を守る行動をとるきっかけになったら嬉しいです。
 

 
(文:岩井美穂)
 
 

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