「ものづくり」の背景にあるストーリーを紹介。作り手の想いやこだわりに迫ります。 インタビュー三重四日市市


 
毎日の食卓に彩りを与えてくれる野菜。ところがその鮮度は日ごとにぐんぐんと落ちてしまいますよね…。土の中で育つ野菜は常温保存がおすすめ。そんな野菜の常温保存に役立つようつくられたのが、三重県四日市市の左官職人舎「蒼築舎」が手がける「左官職人が考えた小さな野菜蔵」です。その秘密は日本の伝統的な建築様式のひとつ「土蔵」! 蒼築舎の左官職人・松木憲司さんと息子の一真さんに誕生秘話を取材しました。
 

調湿作用を生かし、土蔵を野菜保管箱に

 

↑たまねぎ、ジャガイモ、にんじん、ごぼう、さつまいも、大根…など、土の中で育つ野菜が常温保存できる「小さな野菜蔵」。
 
「土蔵」とは、外壁や内壁を土や漆喰で仕上げる建築様式のこと。江戸時代から、米や酒などの保存庫として重宝されていました。土蔵の良さのひとつが調湿作用です。湿度が高ければ空気中の水分を吸収し、反対に湿度が低ければ水分を放出し、室内の室内が安定します。そんな日本古来の経験を生かし、土蔵を新しい製品へと転換させたのが「小さな野菜蔵」です。
 

こだわって選んだ土に左官材料を混ぜて

 

↑商売道具ともいえる土にこだわったという憲司さんと一真さん
 

「野菜は土とともに生きていますよね。できるだけ土の中に近い環境をつくることで、野菜を新鮮なまま保存できるのではないか?」憲司さんのそんな思いが、「小さな野菜蔵」開発のきっかけに。「すでにある素材を利用して環境に配慮したい」と考え、ワインの空き箱をベースに土壁の技術を生かして商品づくりが進められました。
 

↑野菜蔵の壁。土にわらスサを混ぜることで丈夫になるうえ、独特の風合いが生まれます。
 
野菜蔵に合うよう調合したのは豊田市の篠原町で採れた土と、わらスサと呼ばれる左官材料を混ぜ合わせたもの。蒼築舎が選び抜いたという篠原町の土は粘土質のため砂気がなく、土壁にしたときに長持ちするそう。また、土の中にわらスサを混ぜることで土同士が結合し、乾燥してもボロボロと崩れることのない、強い壁に仕上がります。

自分で組み立てる工程も楽しみ!

 
土の良さを知るには、まずふれてみることが大事。そう考える憲司さんのアイデアから、「小さな野菜蔵」は自分で作り上げる組み立てキットになっています(忙しい人向けに完成品も販売)。地元・四日市市を中心に「野菜蔵DIYキット」のワークショップを開催。1人でつくるのに不安な人は、職人と一緒にワークショップで「小さな野菜蔵」を仕上げることもできます。
 


 
左官職人が少ない現代において、土とほかの自然素材を調合する職人は東海地域でもごくわずか。「土の調合からつくり上げる伝統的な工法を絶やしたくない。若い人に土を見て、ふれて、その良さを知ってもらいたいです」と憲司さんは話します。
 

その土地の土を使い、風土を大切に

 
蒼築舎が普段の仕事で大切にしているのが、その土地の素材を使い、地域の風土を取り込んだ壁をつくり上げること。現在、福井県の小中学校一貫校の建設計画に携わっているという憲司さん。敦賀市の海岸線をイメージしたトイレの壁を制作中だとか。
 

↑ワラビやサンゴなど、地域で採取できる自然素材を土と調合。土の質や素材の調合によって表面のニュアンスが異なるのが土壁の魅力。
 
「小中学校の一部の生徒さんにも土や砂を集めてもらい、少しでも土にふれるきっかけになれば」と憲司さん。生徒たちが採取した土をふるいにかけてパウダー状にし、その中に砂や砂利、イネワラなどを調合。地域の魅力を最大限に表現できるように日々試行錯誤しているそうです。
 

↑四日市市の蒼築舎の事務所。さまざまな種類の土壁が展示され、ショールームにもなっています。
 

↑7種類の土を利用してつくられた壁掛け時計デザインがインテリアのアクセントに。
 
土を感じる日常が身近になるよう、創意工夫を重ねる蒼築舎。長年土と向き合い続ける憲司さん、一真さんのお話はまだまだ続きます。後半では「小さな野菜蔵」の素材や性質、制作過程にフューチャーします。
 
 
(写真:岩瀬有奈 文:壁谷雪乃)

 
 

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