「ものづくり」の背景にあるストーリーを紹介。作り手の想いやこだわりに迫ります。 インタビュー三重四日市市


 
「土で育った野菜は、土の中に近い環境で保管することで長持ちするのではないか」。そんな思いがきっかけで生まれた「左官職人が考えた小さな野菜蔵」。昔から米や酒などの保存庫として使われていた土蔵の特徴でもある、調湿作用に優れた土壁がヒントに。
 
手がけているのは、三重県四日市市にある左官舎「蒼築舎」。完成品としての販売もありますが、土に親しめる機会を楽しんでもらえるよう、自分で組み立てる「野菜蔵DIYキット」がメイン商品です。誕生秘話に迫る前編に引き続き、後編では「野菜蔵DIYキット」の特徴や家で組み立てる際のポイント、蒼築舎の左官材料へのこだわりを紹介します。
前編はこちら→土壁の性質を生かした、インテリアにもおしゃれな野菜の常温保存箱【小さな野菜蔵】後編

 

ワイン箱をリサイクルして野菜蔵に

 

↑「小さな野菜蔵」を手がける「蒼築舎」の左官職人・松木一真さん。
 
小さな野菜蔵には、使われなくなったワイン箱を使用しています。「リサイクルすることでゴミを削減し、環境に配慮したい」というのが蒼築舎の考え。土に親しんでもらえるようにとの思いで販売する「野菜蔵DIYキット」は、竹にわら縄を編んでワインの空き箱に取り付けて、ねり土を塗り付けて仕上げていく工程も楽しみです。
 

DIYキットを組み立ててみます

 

↑竹に等間隔の幅を空けながら、わら縄を巻いていきます。
 

ワイン箱の内側に土をたっぷり塗り付けるため、側面にわら縄を巻き付けた竹を設置して幅をもたせます。「鎌倉時代から伝わる土蔵の建築技法を応用しているんです」と一真さん。しなやかな竹の特性により、土が乾いてからも丈夫な骨格としての役割を担ってくれるそう。
 

↑わら縄や竹同士の間隔を空けることで土が隙間にしっかりと入り、乾燥した後により強度が増すのだとか。
 

↑側面に竹を取り付けて土壁の土台が完成。いよいよ土を塗り付けていく作業へ!

土の感触を楽しむひととき

 

↑一真さんが左官として土壁を手がける際は、その土地の風土に合わせて土や水などの素材を変更するそう。
 

蒼築舎が普段土壁を手がけるときと同様に、土、水、わらスサを混ぜ合わせて土壁の材料を作ります。「壁のベースとなる荒壁は砂が多いとボロボロになってしまうので、基本的には土、水、わらスサだけで土壁の材料を作ります」と一真さん。

 

↑豊田市篠原町で採れた土と、水、わらスサを混ぜ合わせた蒼築舎独自の左官材料。篠原町で採れる土は粘土質のため砂気がなく、土壁にしたときに崩れにくく長持ちするそう。
 

わらスサは、土壁が乾燥したときにボロボロと崩れてこないように、しっかり密着させてくれる土の中に繊維を入れることで“つなぎ”の役割を担います。下地を作る際に、なくてはならない素材です。
 


↑混ぜ合わせた土をワイン箱に塗り付けていきます。

 
土は竹が隠れる程度に。このとき箱より上に土を塗ってしまうと蓋が閉まらず、野菜も取り出しづらくなってしまいます。そこで、上端部に養生テープを貼ってマスキングします。「大人になると土に触れる機会が少なくなってきますよね。実際に土に触れて、その感覚を楽しんでほしいです」と一真さんは話します。

 

↑土を塗り付けた後、表面の凹凸を水でならし、なめらかに仕上げます。

 

↑風通しの良い日陰で夏場は1週間から2週間、冬場は2週間から3週間ほど乾燥させ、底にわらを敷いたらできあがり!

 
野菜蔵DIYキットの製作手順は動画でも紹介されています。
https://www.youtube.com/watch?v=GmPpqTD2VOk
 

左官職人のプロダクトづくりは今後も続く

 
蒼築舎では「小さな野菜蔵」だけでなく、左官職人の技を生かして制作したポータブルかまど「コヘッツイ」や「消臭土だんご」などの商品も。
 

↑1つひとつ手づくりで仕上げるコヘッツイ。
 
食料を煮炊きするのに使うかまどを、持ち運びやすく現代風にアレンジしたポータブルかまど「コヘッツイ」。「公の」という意味を持つ“コ”と、関西地方で「かまど」のことを指す“へっつい”を組み合わせたネーミングです。火を起こすのに使うのは薪や炭、固形燃料など。直火炊きで炊いたごはんは、ふっくらつややかな仕上がりです!
 


↑食卓にそのまま置いてもOK。家族でかまどを囲むひとときが楽しめます。
 
素朴な色合いをはじめ、光沢のある表面の質感が特徴。この光沢感は、蒼築舎が得意とする「大津磨き」の真骨頂です。大津磨きとは、土に石灰と繊維を混ぜ、何層にも重ねて壁に塗り付けた後、コテで光沢のある表面に仕上げること。鏡のような仕上がりは、長年技術向上に努めてきた蒼築舎だからこそ成せる技。土本来の自然な美しさが魅力です。

 

↑現代の名工と呼ばれる一真さんの父、左官職人の憲司さん
 

↑そのほかに、自然素材だけで作った「消臭土だんご」も。愛知県豊田市の赤土、白土、黄土の3つの土で作られています。下駄箱やクローゼットに入れておくだけで消臭効果抜群!
 


 
「コヘッツイも、小さな野菜蔵も左官職を後世に伝えるための希望です。みなさんの暮らしの身近な存在として、少しでも左官がつくるプロダクトに興味を持ってもらえたらうれしいです」。左官の未来を見据えて真摯に話す憲司さんと一真さん。
 

 
古き良き土壁の技術をベースに、生活が豊かになるプロダクト「小さな野菜蔵」を生み出した蒼築舎。素朴で優れた性質をもつ土の魅力を、左官職人のプロダクトから感じてみてはいかがでしょうか。

 
 
(写真:岩瀬有奈 文:壁谷雪乃)

 
 

NEW REPORT 新着記事

NEW REPORT 新着記事

もっと見る

pagetop