「ものづくり」の背景にあるストーリーを紹介。作り手の想いやこだわりに迫ります。 インタビュー岐阜愛知


 
コロナ禍によって大きく変化した働き方や暮らし方。ポジティブな面もありながら、多様化したことで生活の切り替えがどこか曖昧になってしまった人もいるのではないでしょうか?
 
そんな忙しない日常の中で、日本茶を中心とした「“小”休止(しょうきゅうし)」を提案する日本茶専門店『美濃加茂茶舗(みのかもちゃほ)』が、新時代の湯飲み「CHAPTER(チャプター)」を開発。チャプターや日本茶を通じて、現代を生きる人々へ伝えたい思いを紹介します。
 

↑一見、湯飲みには見えないスタイリッシュなデザインのチャプターは、デスクワーク中にお茶を淹れて飲んでもらうためのアイテムとして誕生しました。
 
 

お茶を“淹れて飲む”ハードルを下げる

 
日本人にとって「お茶」はとても身近な飲み物。しかし、実際に普段手にすることが多いのはペットボトルで販売されているお茶がほとんど…という人も多いのでは。
 

↑「茶葉やティーパックからお茶を淹れようと思うと、急須の準備や、淹れ終わったティーパックをどうするか?など、少し手間を感じる人が多いと思うんです」と語るのは、美濃加茂茶舗を運営する『茶淹(ちゃえん)』の代表・伊藤尚哉さん。
 
チャプターの大きな特徴は、ふた付きであること。蒸らす役割と同時に、一般的な湯飲みやマグカップでお茶を飲むときに必要な、ティーバッグを置くための小皿代わりになるのです。
 

↑うっすらと内側に入れられたエッジにも理由があるんです。
 
「おいしいお茶を味わうために計量カップで湯量を量る場合もあると思いますが、仕事中に道具を準備するのは手間になってしまう。チャプターは、湯量の目安になるよう内側にエッジ加工を施しているので、これひとつでおいしいお茶が淹れられるようデザインされています」と、取締役の松下沙彩さんが特徴を教えてくれました。
 

↑伊藤さんとともに会社を立ちあげた松下さん。これまで日常的にお茶をのむ習慣がなかった旦那さんも、チャプターをきっかけに飲み始めたそう。
 

↑使わないときでもデスク周りに馴染む、落ち着いた色のラインナップ
左から、磁器らしい艶感の「クリアグレー」、シャープな印象の「マットブラック」、釉薬を施さず土の風合いを全体に残した「クレイベージュ」の3色。
 
生産は他メーカーである多治見の製陶所にて行っていますが、コロナ禍で生産現場に直接足を運ぶことができない中、リモートでの正確な色確認は不可能のため、試作を繰り返しては郵送し合うなど時世的な苦労も重ねました。
 
 

プロダクトデザイナーとの対談がきっかけ

 
チャプター誕生のきっかけは、自社で運営するメディアの企画で対談をした、東京のプロダクトデザインユニットTENTとの出会いでした。
 

 
ものづくりについての対談中、普段はコーヒー派のTENTの2人が、気張らずにどこかリラックスできるという理由からアイデア出しの時だけは“日本茶を飲む”という話が出たそう。そのエピソードがきっかけとなり、仕事中にも手軽に使えるティーバッグ専用の「オフィスで使える茶器」をつくってみよう!と、チャプターづくりが始まりました。
 

画像提供:茶淹
↑制作は、業務用食器のプロフェッショナルである岐阜県多治見市の丸朝製陶所に依頼。汚れにくさや強度が特徴の“多治見締め”と言われる丸朝製陶所が誇る技術を応用しています。
 
「丸朝製陶所でなければ、チャプターは生まれていなかったかもしれません」。既製品にデザインを施すのではなく、製造方法から考えなければならない難しい案件で初めてタッグを組むことになったにもかかわらず、二つ返事で制作を受けてくれた製陶所には感謝の気持ちでいっぱいだと伊藤さんは語ります。
 
 

お茶を嗜むための細かなデザイン

 

↑シンプルなデザインに見える「チャプター」ですが、実現に至るまでにはかなりの苦労があったそう。
 
「原案時、丸朝製陶所からはこの形状では実現不可能だと言われていました。特に飲み口は当初、割れてしまうのが避けられないほど薄く、陶器で実現するのが難しいデザインだったんです」と、伊藤さん。
 

↑“ふたもの”と言われる製品は、かみ合わせの正確性が必須。チャプターのふたは、陶器で作るには難易度が高い形状のため、何度も試作を繰り返したのだとか。
 

画像提供:茶淹
画像提供:茶淹
↑茶渋で汚れるのを防ぐため、湯飲みでは主に内側や全体に施される釉薬。しかしチャプターは装飾として外側のみに施す仕様であるため、通常の製品生産とは異なる方法で作らなくてはなりませんでした。
 
こうして、茶淹、TENTのデザイナー、丸朝製陶所によって新時代の湯飲みができあがったのです。
 
後編では、美濃加茂茶舗立ち上げの経緯や、お茶のラインアップなどについてお話を伺います。
 
 
(写真:岩瀬有奈 文:佐藤奈央)
 
 

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