イベントやスポットなど、新たなムーブメントの「仕掛け人」にインタビュー。 インタビュー愛知春日井市


 
愛知県春日井市にあるオーダー家具製造会社「アーティストリー」の敷地内に、2021年3月、社員が休憩できる「わの休憩所」が誕生。木でつくったにも関わらず、美しい曲線を描いているのがなんともユニーク!こちら、アーティスリーが誇る5軸CNCという最新デジタル技術と熟練の職人技を駆使したもの。休憩所の設計には全国の学生9人も参加。プロジェクトのリーダーであるアーティストリーの大西功起さんに、制作の裏側をお聞きしました。
 

↑「木工なら任せてください」と大西さん。アーティストリーで設計や加工相談窓口を担っています。
 
― 「わの休憩所」制作のきっかけは?
大西:
 自社の休憩所が古くなってきたから新しいものをつくろう、という話が挙がったのがきっかけです。その前から私たちアーティストリーの技術を世間に知ってもらうにはどうしたらいいか?と考えていました。家で使うようなテーブルやイスなどの家具は製造会社名が表示できますが、私たちが手がけるようなホテルやレストラン、ショップ向けのオーダー什器は契約上、自社名を出すことがなかなかできません。そこで、自社の技術を駆使した休憩所をつくることになったんです。
 

↑アーティストリーが手がけた眼鏡ショップ「JINS」なんばパークス店のディスプレー棚。波のような曲線が目を引きます。
 
― 「JINS」なんばパークス店をはじめ、アーティストリーが手がける什器は曲線が多用されていて、彫刻作品のように複雑な造りですね。
大西: 
木材を直線で切るのは想像しやすいと思いますが、曲線となると「?」ってなりますよね。我が社の「5軸CNC」という加工機械は、人の手では難しい3次元の立体切削ができるんです。どんなに複雑な形状でも、設計データがあれば高精度なものが短期間でつくれます。設計データの作成から加工までを行うには、職人が長年培ってきた技術や経験に加えて、デジタル知識が必要です。それらを併せ持った会社は全国でも珍しいと思います。
 

↑5軸CNCで木材加工をしている様子。3D設計データを元に、複雑な曲面も実現できます。
 

― できあがった「わの休憩所」は、どのようなものなのでしょう。
大西: 
半ドーム型のS字の内側と外側のベンチがあるのですが、丸くくりぬいた窓ごしに会話をすることもできます。柔らかな木の空間で“和み”を感じてくつろげ、内と外の“輪”がつながり、また見た人がわっと驚き、新しい“輪”が広がる。そんなイメージの「わの休憩所」です。

 
― いろんな色の木が組み合わさっているのも、空間に温かみと落ち着きをもたらしていますね。
大西:
 設計の3Dモデルを362個のパーツに展開してデジタル加工し、職人が組み立てました。このプロジェクトに共感いただいた3社の屋久島地杉、熊野杉、愛知杉を使っていますが、それぞれの色の違いが重なることで、やさしく包まれるような空間になったと思います。
 

↑アーティストリーのデジタル技術と職人技術を生かした、日本でも前例の少ない木の有機的なものづくりを実現!
 
― 参加した学生とは、オンラインでプロジェクトを進めていったそうですね。
大西:
 学生9名と自社スタッフ3名を2チームに分けて設計アイデアを考え、私は両チームのミーティングに参加しました。当然ながら、最初はみんな「はじめまして」の状態。それぞれが主体的に動いたり発言したりしなければ、何も進みません。そのことに学生たちも気づいたようで、次第にみんな積極的にコミュニケーションをとるようになりました。2チームがそれぞれアイデアをプレゼンし、5軸CNCのポテンシャルを存分に発揮できる「わの休憩所」に決めました。
 

 
― 設計は学生ですが、実制作はアーティストリーの社員が担当したんですね。社内の反応はどうでしたか?
大西: 
「また大西が変なもの(設計)もってきたぞ」と(笑)。こんな形状、ほかでは見たことがないですからね。最終的には形の異なる362ピースの部材を一つずつ積みましたが、最初は誰もつくり方なんてわかりません。ですが、我々は常にオーダーメイドの製品をつくっており、いつも「どうしたら実現できるだろう?」というところからのスタート。学生の設計だからといって手を抜いちゃいけない、ほかの仕事と同じように“アーティストリー品質”のものをつくろうって、社員も意気込んでくれました。
 

↑形がバラバラの362のパーツ。「わの休憩所」制作に賛同してくれた企業から提供してもらった杉材を使用しています。
 

↑それぞれのパーツをレンガのように積んで壁面を作り上げていきました。
 
― 参加した学生からはどんな声がありましたか?
大西: 
「実際につくることがこんなに大変だとは思わなかった」と全員が口にしていました。また、コロナ禍で思うように勉強や活動ができないうえに、授業だと「アイデアをまとめて終わり」なのが、実制作でコストなどビジネス的観点や想定外のトラブルがあることを知れたのも貴重な経験になったようです。それまでオンラインでつながっていたメンバーがお披露目会で一堂に会し、実物を見て、「感動した」と言ってくれました。社会的意義のある機会にもなったかなと思います。
 

↑「わの休憩所」制作メンバーの学生たち。
 

↑「わの休憩所」の内部はドームのようになっていて、木に包まれているような心地よさです。
 
― アーティストリーの5軸CNCの技術で、現在製作中のものがあれば教えてください。
大西: 
北海道の知床にあるホテル「北こぶし知床ホテル&リゾート」のサウナを製作しており、今年6月20日頃完成予定です。プロサウナ―の「ととのえ親方」さんプロデュースのサウナで、わの休憩所を見たととのえ親方が「この技術があればイメージしていたサウナが実現できる!」と依頼してくださいました。2種類作っていますがどちらも一般的な箱型ではなく、曲線を組み合わせた心落ち着く空間をイメージ。窓からは知床の流氷を眺めることができます。
 

 
アーティストリーの「5軸CNC×3DCAD×職人技術」が世の中に広まることで、木のものづくりがもっと多彩に、魅力的になっていきそうです。
 
(文:河合春奈)
 

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