東海エリアの書店をリレー形式で巡り、書店員さんが愛読する本を綴ります。 愛知瀬戸市


 
「築100年の古民家で『本』と『人』、『人』と『人』をつなぐ街の本屋さんを作りたい!」。そんな、ある本好きの女性の夢が実現し、2021年5月、瀬戸市の末広町商店街のほど近くにオープンした小さな書店「本・ひとしずく」。書店員の愛書バトン連載もおかげさまで20回目!今回は「新しい年に向けて、背中をポンと押してくれるおすすめの5冊」を店主の田中綾さんに選んでいただきました。
 
田中さんはお子さんを持つママでありながら、大の本好きが高じて雑貨店のパート勤務から出版社の営業代行へと転職、そして念願の書店オーナーに。そんな本への情熱あふれる田中さんのおすすめは、じっくり読める小説からクスッと笑える写真集まで、バラエティに富んだ5冊。年末年始のお休みに読んでみてはいかがでしょうか。
 
▼もくじ
01『生きるぼくら』著:原田マハ
02『必死すぎるネコ』著:沖 昌之
03『26文字のラブレター』編:遊泳舎 絵:いとうあつき
04『フレデリック ちょっとかわったねずみのはなし』著:レオ・レオニ 訳:谷川俊太郎
05『ないしょ文庫』著:ひみつです!
 

『生きるぼくら』
著:原田マハ(徳間書店)

 

 
「個人的には原田マハさんはアート系の小説の方が好きなのですが(笑)、この『生きるぼくら』は背中をポンと押してくれる、という今回のテーマに特にピッタリだと思ってセレクトしました。引きこもりの青年は、母が突然いなくなったことで外に出ざるを得なくなります。紆余曲折あって青年は蓼科へ。そこで人の温かさに触れ、人生が大きく変わっていきます。心がじぃんと温まる作品です。」と田中さん。
 
人は何かのきっかけで大きな一歩を踏み出せる。そんな可能性と人と人とが支えあう大切さを教えてくれ、一歩踏み出す勇気をじんわりと感じられる本です。
 

『必死すぎるネコ』
著:沖 昌之(辰巳出版)

 

 
「背中をポンと押してくれる」と聞くと、励ますという意味にとらえがち。しかし、この写真集には文章がありません。ただただ、「必死すぎるネコ」たちを見て肩の力を抜いて、思わず爆笑したら、なんだか元気が出ちゃう。
 
「この表紙のネコを見た瞬間、入荷を即決しました(笑)。ページを開いても、どんだけ必死なの!?とツッコミたくなる写真ばかりなんです」と田中さん。インパクトかつユーモアあふれるネコたちを見ていると、思わずニヤニヤ、クスクス。不思議と肩の力が抜けていることに気づくはず。
 
仕事や人間関係などで心が疲れているときに、言葉ではなく、見て、感じて、笑うことで励まされることもあります。誰かにプレゼントするのにもおすすめの1冊です。

 

『26文字のラブレター』
編:遊泳舎 絵:いとうあつき(遊泳舎)

 

 
五七五の俳句、五七五七七の短歌は有名ですが、都々逸(どどいつ)という26文字の唄を知っていますか? 江戸時代から明治時代に流行した、七七七五のリズムで詠まれる唄です。『26文字のラブレター』は、そんな当時の都々逸から恋愛にまつわる作品を集め、現代語訳や解釈、イラストを交えた作品集です。
 
「都々逸を知らない人でも読みやすく、独特のリズムでつい口ずさんでしまうようなものばかり。新しい年に都々逸という今まで知らなかった世界に出会うのもいいですよね」と田中さん。恋愛中、とくに片思いしている人にとっては、背中をポンと押してくれる都々逸に出会えるかもしれません。

 

『フレデリック ちょっとかわったねずみのはなし』
著:レオ・レオニ 訳:谷川俊太郎(好学社)

 

 
「このネズミのキャラクター・フレデリックは見たことがあっても、絵本は読んだことがないという人も多いのでは?」と田中さん。ねずみのフレデリックは、来るべき冬に備えてみんなが一生懸命食料を集めるなか、じっとして動こうとしません。一見サボっているように見えるフレデリックですが、実はこれには理由があって……。
 
「いつもいつも、絶対にみんなと同じじゃなくてもいいんだ。人にはそれぞれ役割があり、多様性を認め合い、自分に自信をもって生きることって大切なんだと気づかせてくれます。ぜひ冬休みに親子で読んでいただきたい本です」。

 

ないしょ文庫
著:ひみつです!

 

 
タイトルも作者もないしょ!手がかりはブックカバーにある5つのキーワードのみ。「私が本屋さんで本を買うときに装丁や好きな作者の本を選んでしまうのもあって、気になるキーワードで本を選んだら新たな作家や本との出会いがあるのでは?」との田中さんの思いから、既存の本を、オリジナルのブックカバーでアレンジ。キーワードは田中さんが考え、傘を持ったキャラクターは旦那さまがデザインしたそうです。
 
何冊もある『ないしょ文庫』ですが、田中さん曰く、「今回ご紹介した本は、本を読み切ったことがない人が完読できた!というエピソードもあるほど読みやすい本です」とのこと。映画化もされました。と、ヒントはここまで、あとはないしょです。貼られているテープが黒いものは人が殺されるなど怖い描写がある本だったりと、テープの色も本選びの参考に。本との出会いが楽しめる「本・ひとしずく」オリジナルのシリーズです。
 
 

 
 

 
築100年以上の古民家を改造して作られた「本・ひとしずく」。ノスタルジックな店内に一歩踏み入れると、初めて来たのに「懐かしい」と感じます。
 
店内には、話題のベストセラー小説から写真集、詩集や実用書をはじめ、一般の書店では出回りにくいリトルプレス、古本など幅広い本が並びます。「子どもたちが生きやすくなる本や、知っていてほしいと思う本、また、手に取った方の新しい何かのきっかけになることを願いながら、本を選んでいます」と田中さん。
 

 
靴を脱いでゆっくり本を選べる小上がりスペースも。また、紙にもこだわりを持つ田中さん。「書店で本を選ぶ魅力は、パラパラとページをめくって内容が少し見られるのもそうですが、カバーを外したときに異なる質感の表紙がでてきたり、ページをめくる感触だったり。本を“感じて”選べるところがいいですよね」。
 

 
本棚を貸し出し、本を委託販売するコーナー「ひとはこ本屋さん」もユニーク。水色のメモが借主の“屋号”。それぞれの借主さんのセンスや好みにあふれる選書が魅力です。マスキングテープや文房具、バッグなどの取り扱いも。また、「『本』と『人』、『人』と『人』をつなぐ街の本屋さんを作りたい!」のモットー通り、店舗でのワークショップの開催や、イベント出展も積極的に行っているそう。最新情報はSNSでチェックできます。

 

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