東海エリアの書店をリレー形式で巡り、書店員さんが愛読する本を綴ります。 名古屋熱田区


 
「LGBTQ+」という言葉は知っていても、自分が関係すること以外の実情についてはよく知らない…とういう人もいるのではないでしょうか。今回はそんな人間の多様性について考えを深めることができるおすすめの5冊を紹介。2021年1月、金山駅近くの沢上商店街にオープンした書店「TOUTEN BOOKSTORE(トウテンブックストア)」オーナーの古賀詩穂子さんに、おすすめの5冊とそれぞれの魅力について教えていただきました。

 
▼もくじ
1.『LGBTヒストリーブック』
2.『愛と差別と友情とLGBTQ+』
3.『あいつゲイだって』
4.『キミのセナカ』
5.『IWAKAN』
 
 

『LGBTヒストリーブック』

著:ジェローム・ポーレン(サウザンブックス社)
 

 
子どもから大人まで学べるLGBTの権利の話。「LGBTって?」「プライドパレードって何?」「なんでレインボーの旗を掲げているの?」というところから、厚みを持って歴史を知ることができる素晴らしい本です。
 
著者であるジェローム・ポーレンさんが、――「LGBTの歴史」、その中でも「公民権運動の歴史」をひもとく子ども向けの本がないことに気がつき(「はじめに」より)――、2015年に刊行したとのこと。子ども向けというには情報量が多いですが、資料集のように写真や「アクティビティ」と称して考えるコーナーも随所に散りばめられていています。
 
1人ひとりの生き方やエピソードが描かれているため、歴史は人のもとに作り上げられていること、今の権利は過去の人たちが築いてきたものの延長にあることを感じます。

 
 

『愛と差別と友情とLGBTQ+』

著:北丸雄二(人々舎)
 

 
ニューヨークで25年活動してきたジャーナリスト・北丸雄二さんの記録。本書では映画「ボヘミアン・ラプソディ」のメディアでの紹介において、物語で大事な部分であっても「ゲイ」や「エイズ」という言葉に触れらなかった例から話が展開していきます。
 
北丸さんは本書で、――私たちの「世間」では、人権に関して欧米では通じる話を下支えする、基本情報や基礎知識があまり共有できていないように思われます。(”欧米でだって五十歩百歩”な話はのちに出てきますが)――と言います。LGBTQ+について語ることはマイノリティのアイデンティティを獲得するための運動について述べること、話は女性運動やBLMにも広がります。
 
客観的・論理的でありながらも、ときにユーモアを交えながらの語り口がとにかく面白く読みやすいため、人権運動に関する疑問を情報や知識でぐっと近いものにしてくれるでしょう。

 
 

『あいつゲイだって』

著:松岡宗嗣(柏書房)
 

 
カミングアウトのすぐ近くにあるのが、アウティングです。「あの人、○○らしいよ」。このタイトルのとおり、本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露することを「アウティング」と言います。悪意なくとも言ってしまったと思い当たる点があるかもしれないし、これからも、思いもしないかたちでしてしまう可能性がないとは言えません。
 
アウティングが危険性のあることだと自覚する必要があるとともに、「絶対してはいけないこと」にすることの危うさ、シチュエーションや立場ごとの複雑さをさまざまなケースを用いて考えさせてくれる一冊。いつ自分がアウティングする可能性のある立場になるかわからないからこそ知識は必要。多様性をうたう社会において、ぜひ広く読まれてほしい本です。

 
 

『キミのセナカ』

著:野原くろ(サウザンブックス社)
 

 
日本と同じように性的マイノリティのカミングアウトが簡単でない韓国の出版社6699pressが、日本の漫画家・野原くろさんに依頼して発刊されたボーイ(ズ)ラブコミックです。
 
同級生たちは女性グラビアアイドルの話題に盛り上がり、家族からは「早く彼女くらい作りなさいよ」と言われる。どこにも居場所を見つけられずにいるタケルの前に転校生として現れたのが、地元の幼なじみの公太郎でした。
 
人を好きになっていく描写や一緒にいるだけでドキドキする感覚は学生時代を思い出して眩しい。異性愛の恋物語が多く描かれる中で、同性を好きになること、誰かを好きになったりならなかったりすること、さまざまな恋物語が増えていくことは良いことだと思います。装丁もすてきなのでぜひ手に取ってみてください。

 
 

『IWAKAN』

(Creative Studio REING)
 

 
世の中の当たり前に違和感を問いかけるマガジン『IWAKAN』。第4号の特集は「多様性?」です。
 
例えば「女性の活躍推進」とうたっている企業に女性管理職がまったく見当たらないとき、その企業では女性が昇進できるのか、仮に妊娠しても働き続けられるのか……。言葉だけが打ち出され、実態が伴わないことへの違和感を覚える場面はそれぞれあるのではないでしょうか。
 
LGBTQ+やマイノリティがメディアで描かれることが増えてきたことで、自分のアイデンティティを知ることができ、孤立感から解放される人も少なくありません。多様性という言葉のプラスの部分とマイナスの部分。ときには希望となり、ときには加害性をもつ。
 
1人ひとりの声に耳を傾け、アートの力を発揮する『IWAKAN』第4号では表象制作現場における合意についてや中国での表象文化、「ふつうのOL」への違和感に「デキる男」像の呪縛、家族のかたちなどさまざまなアプローチから多様性の表象について考えています。

 
 

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