長良川と木曽川で脈々と受け継がれている鵜飼。古くは織田信長が「鵜匠」という地位を与え、徳川家康が好んで鑑賞したといわれています。
鵜匠と鵜が息を合わせて鮎を捕まえるその様は、篝火が幻想的な夜はもちろんのこと、鵜の動きがよく見える昼も魅力を堪能することができます。今回は、全国で最初に昼の鵜飼をスタートさせた、愛知県犬山市の「木曽川うかい」へ。鵜匠の仕事や、鵜飼の魅力をたっぷりと体感してきました!
1年中、多岐にわたる鵜匠のシゴト
鵜飼乗船場からほど近い、犬山城麓の木曽川沿いで鵜に触れながら体調チェックをおこなっていたのは鵜匠の水野敦さん。1992年に市の職員として採用されて以来、「木曽川うかい」の鵜匠として経験を積んでいます。
「6月から10月のシーズン中は毎日、こうして体に触れながら体調をチェックするんです。個体によって性格はさまざま。その性格を把握して、いつもと様子が違えば今日は調子が悪いかな、と」。
おとなしい鵜、やんちゃな鵜、食べるのが大好きな鵜。
鵜は相性のいい2匹がペアとなり、一緒の鵜籠に入れられています。
↑鵜は鵜匠の手から餌をもらい、縄をつけて泳ぐ練習をし、さらには篝火の下で泳ぐ練習をして…と、段階的に鵜飼に慣れていきます。
そのほかにも、鵜匠の仕事は多岐にわたります。シーズン後半の9月下旬頃から11月にかけては腰みのづくり。腰みのに使う藁(わら)は5月に水につけて叩き、アクを抜いておいたもの。そして、篝火に使う薪は、12月までに800束以上つくっておきます。1月から3月は、鵜籠づくり。材料も自分たちで集めるんだそう!
↑鵜飼のときに履くのは、つま先から土踏まずまでの足半(あしなか)と呼ばれる草履。これも鵜匠自身で制作。船の上では滑り止めの役割を果たします。
また、船のメンテナンスも鵜匠の仕事。細々としたところまで、鵜匠の仕事の幅広さに驚きます。
「細かな仕事も多いですが、1番大事なのは鵜の性格を覚えること。鵜飼のときは1つの船で10羽の鵜を使うのですが、本番での私たちの仕事は、縄が絡まらないようにすることと、鵜に魚を獲らせること。いずれも鵜の性格を把握していないとできないんです。お客さまの目の前で鵜が魚を獲れるようになるのが、私たち鵜匠の喜びです」。
鵜籠を船に乗せ、いよいよ鵜飼本番が近づいてきました。
屋形船に乗り込み、ランチ~鵜飼の観覧へ
まずは、木曽川を遊覧しながら、ランチタイムです。
私が注文した「わん丸君弁当」はこちら。
鮎の塩焼きや甘露煮をはじめ、品数盛りだくさん。頬をなでる川風が心地良く、岸を離れるだけでゆったりとした非日常の世界へと誘われます。
犬山城が見えてきました!
「木曽川うかい」は、鵜飼と城の景色がともに楽しめるのも魅力のひとつ。「木曽川から見ると、犬山城が人の顔に見えるんだよ」と船頭さんに教えてもらい、よく見てみると…たしかに!
食事が終わる頃に岸に戻り、鵜匠のおもてなしタイム。鵜飼についての理解を深めてから、再び乗船します。
ここから、いよいよ鵜飼の観覧が始まります。
鵜が一斉に川へと放たれました!
鵜匠は縄が絡まらないよう、鵜の動きに合わせて縄を動かし続けます。ちなみに、鵜の視力は6.0~8.0ほど! 人間よりずっとよく見える目で、水中の鮎を探します。眼球は水中メガネの役割をする水膜に覆われているんだそう。
パシャパシャと音をたてて鵜が水中に潜ると、観客の視線はその鵜に集中。
鵜が魚をくわえてくると、歓声があがります!
お腹まで飲み込んでしまわないよう、鵜の首元には縄がくくられています。くわえてきた魚は船上で吐くと、鵜は再び川へと戻ります。
ときおり、鵜匠が鵜に向かって「ホーホーホー」と声をかけます。これは、鵜を励ますため。縄を操り、声をかけ、鵜匠と鵜が息を合わせて魚を獲る様子は、水面の心地良さも相まって感動的でした。
下船すると、東海エリア初の女性鵜匠・稲山琴美さんの姿が!
かわいい笑顔に癒やされます。
爽やかで、広々とした景色の美しさも堪能できる昼鵜飼とはひと味違い、夜鵜飼は篝火とライトアップされた犬山城が幻想的な情緒を奏でます。
心地良い川風に吹かれながら、伝統漁法に目を奪われる「木曽川うかい」。2019年は10月15日までの開催です。
(文:広瀬良子)