書店員の愛書バトン。Vol.19『冬に楽しみたい!「夜」が印象的なおすすめの小説』5冊


 
名鉄名電各務原駅から徒歩10分、アピタ各務原店1階にある「草叢BOOKS 各務原店」。広々とした店内では、新刊のほかに20万冊以上の中古書籍、豊富な雑貨類も展開。また、キッズスペースやカフェ、ヨガスタジオも併設。“本を中心に、ヒト・モノ・コトに出会える、公園のような本屋”のコンセプト通り、多彩なカルチャーとの「出会い」が楽しめる書店です。
 
書店員の愛書バトン連載19回目となる今回は、「夜」をテーマに草叢BOOKS 各務原店のスタッフ大島由嗣さんが5冊の小説を選書。「夜」というワードから、みなさんはどんなイメージを思い浮かべますか。「ワクワク」や「スリル」といったどこか刺激的なイメージ。はたまた、「恐怖」や「犯罪」という恐れのような印象を持つ方もいるかもしれません。さて、大島さんの選書はどんな「夜」の姿を見してくれるのでしょうか。
 
▼もくじ
01『夜のピクニック』著:恩田陸
02『52ヘルツのクジラたち』著:町田そのこ
03『パイロットフィッシュ』著:大崎善生
04『アフターダーク』著:村上春樹
05『白河夜船』著:吉本 ばなな

 

もくじ

『夜のピクニック』
著:恩田陸(新潮文庫)

 

 
人気作家の恩田陸さんによる青春小説の名作『夜のピクニック』。全校生徒が24時間かけて80kmを歩く高校の伝統行事「歩行祭」。それぞれの登場人物が、誰にも言えない「秘密」や歩行祭に懸ける「想い」を抱えながら、24時間を過ごしていきます。
 
この小説では夜が更けるにつれて、それぞれの悩みや葛藤といった心に抱えていた「闇」のようなものが吐露されていき、夜明けの訪れとともに浄化されていく…そんな夜の時間が印象的に描かれています。高校生の登場人物たちと青春の1日をともに体感したような、清々しい気持ちになれる1冊です。
 

『52ヘルツのクジラたち』
著:町田そのこ(中央公論新社)

 

 
2020年に発刊されるとたちまち読書サイトやテレビ番組、SNSなどで称賛を集めて大きな話題となり、2021年には本屋大賞も受賞した『52ヘルツのクジラたち』。人生を家族に搾取されてきた主人公と「ムシ」と呼ばれる少年との出会い、孤独な二人が心を通わせていく感動の物語が描かれます。
 
タイトルにもなっている「52ヘルツのクジラ」とは、あまりに高音な声を持つため泣いても歌っても仲間に気付かれない、「世界でもっとも孤独なクジラ」と呼ばれる実在のクジラ。眠れない夜、録音された52ヘルツのクジラの寂しい声を聞きながら夜明けを待つ主人公の孤独な姿が、声をあげても気づいてもらえない、悲しい「叫び」にあふれる現実の世の中と重なります。
 
社会問題や人間の心の闇が鮮明に描き出される悲しい物語ですが、読み終わると不思議と温かな気持ちにもさせてくれる1冊です。
 

『パイロットフィッシュ』
著:大崎善生(角川文庫)

 

 
パイロットフィッシュとは、高級魚を飼育する際に水質を整えるため前もって水槽に解き放つ魚の総称。水槽内に高級魚を受け入れやすい環境ができ上がれば、用済みとなって水槽から引き上げられてしまう存在です。
 
著者・大崎善生さんは、人との出会いをこのパイロットフィッシュに見立て、自分たちの人生においても、苦しいときや悲しみに浸るときに寄り添って気持ちを整えてくれた「パイロットフィッシュ」のような存在が誰しもいたのでは?と読む人に問いかけます。
 
どこか理屈っぽく冗談ばかりを語る主人公が、時折発する真をつく一言。とくに「一度出会った人間とは二度と別れることはできない」という言葉。パイロットフィッシュのように今は目の前からいなくなってしまったけれど、決してなかったことにはならない。静かでどこかもの寂しい、そんな一人の夜に読みたくなる本です。
 
 

『アフターダーク』
著:村上春樹(講談社文庫)

 

 
主人公の姉妹を中心にさまざまな登場人物が織り成す一夜の群像劇が描かれる『アフターダーク』。夜を舞台に描かれるこの不思議な物語は、すべてが謎のまま終わります。「たった一晩の出来事」を切り取っただけなのに、読み返すたびにさまざまな考察や解釈を楽しめるのが、文学作品の持つ魅力であると再認識させてくれます。
 
なにより、「夜」という時間に対して私たちが抱く、言いようのない「不思議な感情」。非日常感や、暗闇への恐怖、何かが起きそうな期待感、そしてどこか人恋しさを覚える寂しさ、そんな言葉にできない感情を文章で巧みに表現する村上春樹さん。世界的作家である所以を感じさせる1冊です。
 
 

『白河夜船』
著:吉本 ばなな(新潮文庫)

 

 
タイトルの「白河夜船」とは、なにが起きても気づかないほどぐっすり眠り込むことを表したことわざ。主人公・寺子の記憶と現実が、眠ったり起きたりするように交互にやってくる描写は、読んでいてぐっすり眠っているときのまどろみの中にいるような感覚に。
 
記憶と現実の狭間で浮き沈みしながら、自分の心の中にある「暗いもの」を見つけていく寺子。どこか切ないストーリー展開も、吉本ばななさんの紡ぐ文章は軽やかで暗くなりすぎず、読了後は小さな希望すら感じることができる1冊です。
 
眠りから覚めて現実の世界に戻るのは、ときに辛いこともあります。しかしこの本を読むと、目を開けて自分の足で立ちあがり、今生きているこの瞬間と周りの人たちを大事にしようと思えるんです。
 
 
夜に読みたいおすすめの本について、こちらでも紹介!
書店員の愛書バトン。Vol.10『静かな夜をともに過ごしたい本』5冊
 

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