書店員の愛書バトン。Vol.8『私の人生の師匠と呼ぶべき本』5冊

 

 
アピタ新守山2階にある草叢BOOKS新守山店は、日常(ラフ)と上質(ラグジュアリー)の間の“ラフジュアリー(日常的上質生活)な時間”をコンセプトにした書店。館内にはスターバックス コーヒー、レンタルCD/DVD・コミックのTSUTAYA、キッズスペースまでが揃います。連載8回目の今回は、そんなちょっと贅沢な時間が過ごせる「草叢BOOKS新守山店」副店長の吉富圭さんに本をセレクトしていただきました。
 

もくじ

『オン・ザ・ロード』
著:ジャック・ケルアック 翻訳:青山南(河出文庫)

 
多くの人の人生を変えた本ですが、私もその一人。正直、初めて読んだときはさほど面白いとも思えなかったのですが、持っていることって大事!何度も読み返すうちに、楽器が弾けるわけでもなく、パンクスやモッズを名乗るわけにもいかなかった私が、「ビートニク」と呼ばれるヒップな集団に帰属できたのですから。(1990年代に宝島を読んで上京した地方出身者ってそういうものだったでしょう?)
 
旧版の鈴木英人の装丁も素晴らしいのですが、新訳になって随分読みやすくなりました。ちなみに、私たち「草叢BOOKS新守山店」が選書宅配サービスを始める際にも、ビートニクの理想的存在である「無賃乗車で各地を放浪した移動労働者」を意味する「HOBO」という言葉を冠することとしました。名付けて「HOBOLIBRARY」です。

 

『風に吹かれて』 
著:樋口明雄(ハルキ文庫)

 

先に紹介した「オン・ザ・ロード」によって人生が変わった人の中で、最も有名な人の最も有名な曲をタイトルに冠した本書。私と同郷(山口県岩国市)の著者による自伝的な青春小説です。

主人公たちが私の実家の前の道路を自転車で行き来し、私の通った中学校に通い、私の遊んだ井堰でゴリを釣るのだから面白くないわけがなく…!風景描写が細かければ細かいほど心底ありがたいと思えるものは、後にも先にもこの本だけかもしれません。きっと、私と同郷じゃない方でも「どこか懐かしい」そんな田舎町の雰囲気を味わってもらえるはずです。

 

『人生に、寅さんを。「男はつらいよ」名言集』
(キネマ旬報社)

 
昨年は「男はつらいよ」50周年でしたが、その10年前となる40周年を記念して出版された、日本で最も有名な旅人・寅さんの名言集。何しろ、永瀬正敏がジム・ジャームッシュ監督の映画の撮影時にミュージシャンのイギー・ポップに会った際、「ドゥ・ユー・ノウ・トラサン?」と聞かれたというエピソードもあるほど、海外での認知度も絶大!私はとにかく寅さんが大好きで、長いこと京成線沿いに住んでいたほどですが、そんな私にとって「人はなぜ生きるのか?」という問いに、誰よりも明快な答えを出してくれたおじさんでもあります(第39作「寅次郎物語」のラストシーン)。こういうのを「座右の1冊」というんじゃないでしょうか。

 

『忘れられた日本人』
著:宮本常一(岩波文庫)

 
尊敬する人を3人挙げろと言われたら、戦前生まれの昭和の代表的喜劇人、そして旅人としても名高い渥美清・永六輔・小沢昭一(3)と答えます。この3人の源流に位置づけられる人が、日本各地の民間伝承を調査した民俗学者であり、この本の著書である宮本常一だと私は思います。司馬遼太郎をして「あの人にはかなわん」と言わしめた宮本常一。その代表作が本書です。

私はもともと、さびれた商店街や昔ながらの土産物屋が好きな性質ですが、宮本常一を知ることで私がなぜさびれゆく風景が好きなのか、どうして20世紀の音楽しか聴かないのか、4Gが5Gになろうがなるまいが全くどうでもよいと思うのはなぜなのか?といったことが、本書を読むことでよりはっきりと分かったような気がしますし、少なくとも私が好きな人たち(みうらじゅんもボブ・ディランも)が、知れば知るほどそれぞれに共通点があることがわかり、見事に一本の線でつながったのは確かだと思います。

 

『フラニーとズーイ』
著:J・D・サリンジャー 翻訳:村上春樹(新潮文庫)

 
私にとって「オン・ザ・ロード」とともに必読書である、「ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン・ザ・ライ)」。その著者サリンジャーによる「フラニーとズーイ」は読んですぐ夢中になり、今でもしばしば読み返します。

不思議と言えば不思議な、主人公の2人がほとんど動かず、そのかわりとにかくしゃべりまくる、あるいは手紙を読んでいるお話です。しかし人生で一度くらいは、この2人のように大切な人の魂を救い出してあげたいと、本気でそう思います。

 
 

  
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