北設楽郡にあり、愛知県を代表する歴史ある酒蔵・関谷醸造。さまざまな日本酒や焼酎、また、オリジナルリキュールなどの新しい商品の開発も積極的に行っています。特に看板商品である「空」は幻の日本酒として有名で、たとえ関谷醸造という社名は知らなくても、「空」は知っている、という人も多いのでは?
その関谷醸造が2021年5月、道の駅したら内に開設したのが「ほうらいせん酒らぼ」。なんと、地元産のお米を使い、本格的な日本酒作りや甘酒作りが楽しめる体験型施設とのこと。
今回は驚くほど簡単にできる、甘酒作りに挑戦してきました!
まずは甘酒について学ぶ授業から
「道の駅したら」の2階にオープンしたほうらいせん酒らぼ。
入って驚くのがその空間!まるで昭和時代にタイムスリップしたようなお部屋です。甘酒作りの講師を務める、関谷醸造・ほうらいせん酒らぼ室長の今泉拓郎さんによると「廃校になった学校の資材をリユースしています」とのこと。甘酒作りの前に、この昭和レトロな空間を写真に撮る人も多いのだとか!
関谷醸造といえば、日本酒好きでなくともその名前を知っているほど有名な愛知を代表する酒造メーカー。そんな酒蔵の麹を使った甘酒……その味わいに期待がふくらみます!
「甘酒作りって難しそう」というイメージがありましたが、「酒らぼの甘酒作りはとっても簡単です。小学生でも作れますよ」と今泉さん。えっ、本当に……?と半信半疑のまま、まずは今泉さんの授業「甘酒教室」を聞きます。よく見ると黒板に「日直・今泉」の文字も。遊び心が効いていますね!
江戸時代の風情を記した「守貞漫稿」には既に甘酒売りの絵が描かれており、江戸時代中期にまとめられた「和漢三才図会」には米と麹の割合を記した、今でいう甘酒レシピまで記録に残っているのには驚き!
甘酒には麹甘酒と酒粕甘酒があり、最近の人気は砂糖を一切使わず甘みが楽しめる麹甘酒。しかし今泉さんは「酒粕甘酒も麹甘酒とはまた違った旨味があるのでぜひ作ってみてほしいですね」とのこと。なかには「酒粕甘酒の方が懐かしい味わいで好き」という人も少なくないのだとか。
さて、いよいよ甘酒づくりスタート。と、その前に、甘酒を作るために使う酒らぼオリジナルスープジャーの色を選びます。ジャーの代金も参加費に含まれており、持ち帰って甘酒を飲んだあとは、会社や学校のお弁当にも使えそうでうれしい!
今回はせっかくなので、甘酒にちなんで白をセレクト。
いざ甘酒作り。ポイントは発酵の温度
まずは熱湯でジャーを温めます。
ジャーを温めている間に甘酒のもととなる麹を計ります。
麹は豊田市にある「ほうらいせん吟醸工房」で製造されたもの。その麹に使われているのは「ミネハルカ」という甘酒や塩麹作りに適したお米です。
さて、ここからは手際の良さが勝負! ジャーを温めていたお湯を捨てたら……
温めたジャーの温度が下がらないよう、ササッと麹をジャーへ移しすぐフタを締めます!
麹に合わせるお湯は、75℃まで冷ますのがポイント。麹菌は生きているため、75℃を超えると麹がでんぷんを糖にする力=糖化力がなくなってしまうそう。なんだか理科の実験みたいでワクワク!「甘酒づくりには温度が大事なんだな」と、あらためて実感します。
この日は雪が舞うほど寒い日だったこともあり、今泉さんのおすすめで76℃になったらメスシリンダーで170mlを量り、お湯をジャーへ。
……なんと今回の甘酒作り、作業はこれだけ!本当に驚くほど簡単です。
フタをして、7時間後に完成。この日は14時に仕込み完了だったため、21時頃が飲み頃。というのも、「麹菌がよく働く、つまり酵素が米に含まれるでんぷんをブドウ糖へと替える適温が55℃。その状態で6~8時間置くと、優しい甘みが感じられる甘酒が出来上がります」と今泉さん。
なるべくゆさ振らずに持ち帰り、温度が下がらないよう完成まで絶対フタを開けないように、とのこと。また、手作りのため「作ってから24時間以内に飲み切るようにしてください」とのお話でした。
ジャーだけでなく、麹レシピや資料は持ち帰りOK。今回使った「ミネハルカ」の麹のおみやげつきなので、お湯さえ用意すれば、家でも甘酒づくりが楽しめます。
甘酒作りセット一式を持ち帰るバッグから、ほんのりきな粉のような香りが!
ビニール袋のようなやわらかさと、ザラザラとした手触りが特徴的。なんとこれ、関谷醸造の酒作りで出た米ぬかを使用したエコバッグなんです!きな粉ような香りは、米ぬかの香りだったんですね。
かなりしっかりしているので、繰り返し使えそう。今後、ショッピングバッグとしても使いたいと思います!
これで甘酒作りは終了。と、帰り際に今泉さんから耳寄り情報をゲット。1階にある売店で、酒らぼで絞った酒粕とここでしか買えないお酒が販売されているというのです。
さっそく1階へGO!
道の駅したらでしか買えない限定生酒も!
酒らぼで仕込まれた、道の駅したらでしか買えない日本酒「純米生酒無濾過したら」。ほんのりとした麹ならではの優しい酸味とフルーティーな味わいが特徴。するすると飲める辛口で、日本酒は苦手という人も「これなら飲める!」というほど飲みやすい日本酒です。
また、関谷醸造の瓶入り麹甘酒「ほうらいせん蔵元のあまざけ」も販売。この日は平日にもかかわらず、残りわずか2本!「したら」も「あまざけ」も、見つけたら即買いした方がよさそうです。
酒らぼの日本酒仕込み体験で出た酒かすも。一般的な酒粕はほろほろしていますが、酒らぼで作られた酒粕はしっとりしているのが特徴です。酒粕甘酒はもちろん、粕汁、お鍋、グラタンなど幅広い酒粕料理にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
完成の21時。さて、その出来栄えは!?
21時を過ぎたので、いざ開封します。
スプーンでかき混ぜたらこんな感じに。甘酒というには若干ぽってりしています。
温度や時間で仕上がりが異なる、これも麹パワーのおもしろみ!ミキサーでなめらかにするとゴクゴク飲めそうですが、今回はこのまますくっていただきました。
今泉さんは「ジャーで作る甘酒は、甘みがあっさりめです」とのことでしたが……今回の甘酒はものすごく甘かった!甘いもの好きにはうれしい誤算です。
お風呂上がりの子どもに、デザートとしておすそ分け。日頃から甘酒は大好きなのですが、ほんのり温かい甘酒を食べて「食べる甘酒もアリだね!」と大喜び!あっという間に完食しました。
しっかり冷やしてプリンやゼリーのように、“食べる”デザートとしてもよさそう……。甘酒の新たな可能性が生まれたかも!?
甘酒教室でいただいた麹があるので、今度は子どもたちと一緒に作ってみようかな。今泉さんは「今回は麹100gに170mlのお湯でしたが、その割合を変えてみてもおもしろいですよ」とおっしゃっていました。
……う~ん、これはやるしかない!甘酒の沼にハマりそうです。
(文:矢野裕子)
場所 | 愛知県北設楽郡設楽町清崎中田17−7 |
営業時間 | 土・日・月・木・金曜のうち、体験実施日時のみの営業 |
駐車場 | 16台 |
場所 | 新東名高速道路「新城IC」より車で30分、東名高速道路「豊川IC」より車で1時間10分 |
https://www.houraisen.co.jp/ja/sakelabo.html
甘酒教室
料金 | 3,300円※空きがあれば当日も受付、当日3,850円(税込み) |
所要時間 | 1時間程度 |
問い合わせ | TEL 0536-62-1017 |