気に入った服を長く使ってもらうために。 “洗う”という枠を越えたクリーニング店の挑戦!【Save the Ocean代表 東本猛さん】


 
クリーニングといえば服を洗ってキレイにしてくれる場所。ところが、「洗う」ということだけでは解決できない服の悩みを、「買う」ときの意識づけから変えてくれるような場所があるのです。それが、愛知県春日井市にあるクリーニング店「カチガワランドリー」。2021年6月、県内初のエシカルファッション専門店をオープン。気に入った服を長く使えるよう、「洗う」という枠を越えて服選びからメンテナンスまでを手がけるカチガワランドリーの運営元、Save the Ocean代表・東本猛さんを訪ねました。
 

↑左からファクトリーディレクターの金山容基さん、代表の東本さん、岐阜県多治見市の古着店「CHIC YOUNG CLOTHING STORE」の店長さん。
 
―― まずは、6月にオープンしたばかりのエシカルファッション専門店について教えてください。
東本さん(以下、敬称略):
もともとあった「カチガワランドリー 駅前店」を改装し、従来のクリーニングサービスに加えて、古着から新品まで長く着られるエシカルファッションを販売しています。1階では、「CHIC YOUNG CLOTHING STORE」の古着を、2階では日本屈指の品質を誇る一宮市の尾州産ウールを使ったスーツなどを扱っています。
 

↑店内の1階には、「CHIC YOUNG CLOTHING STORE」の古着がずらり。
 
―― クリーニング店が「洗う」だけじゃなく、「服を売る」ことになったきっかけは何だったのでしょう?
東本:
クリーニング店に持ってこられる服には、洗えない素材だったり、縫製が悪くて洗うと型崩れしてしまったりと、クリーニングでは防げないトラブルがたくさんあります。服を長持ちさせるためには、洗い方もそうですが、買うときにどのような生地で縫製してあるかを確認することが大事。でも、服によっては洗濯できないものがあることを知らないお客さんが意外に多いんです。そこで、気に入った服を長く着てもらえるよう、私たちが洗う立場から見た良い服の提案や、正しい洗濯をすれば長く着られる新品の服を買ってもらいたいと、エシカルファッションのお店をオープンしました。
 

↑勝川駅北口から徒歩1分の場所に店を構えるカチガワランドリー。
 
―― お店では、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか。
東本: 
服によって作りが違うなら、洗い方やアイロンのあて方もさまざまです。購入時の商品タグの見方から、自宅での正しい洗濯方法まで、日々洗うことと向き合ってきた私たちが培ってきたメンテナンス方法を伝えています。
 


↑縫製や生地の特徴など、商品について丁寧に説明してくれるのも魅力。
 
―― クリーニング店が太鼓判を押す商品ラインナップで正しい洗濯方法まで教えてもらえるなんて、服好きにはたまらない場所ですね!
東本:
 ほかにも、定期的にスーツのオーダー会を開催し、オーダースーツと古着アイテムを組み合わせたスタイリングを提案したり、「CHIC YOUNG CLOTHING STORE」の店長が月に一度店頭に立ち、着こなしや服選びのアドバイスを行ったりと、「気に入った服を長く愛用したい」という思いを喚起させる機会を作っています。クリーニング店に来てくれる人は服好きな人が多いからこそ、そういう思いを大切にしてほしいんです。
 

↑2階には、こだわりの新品スーツが並んでいます。フルセットだと高額になってしまうスーツスタイルも、古着のネクタイやシャツを合わせると手軽でおしゃれな着こなしに。
 
―― 素敵ですね!これらの取り組みも、クリーニング店での経験や思いがあったからこそ?
東本:
クリーニング店に服を持ってくるお客さんが求めているのは、新品同様の仕上がり。しかし、買ったときの状態を知らない私たちにとって、その期待に応えるのは至難の業です。現状よりキレイにすることはできるけど、新品同様の仕上がりにはできないという葛藤を抱えていました。
 

↑クリーニングサービスを担当し、繊維製品品質管理士の資格を持つ金山さん。
 
―― なるほど、クリーニングではその課題にどのように対処したのですか?
金山さん(以下略称):
まずは、新品同様の仕上がりを自分の目で確かめるために、メーカーの工場に直接足を運びました。服に込められた作り手の想いやこだわり、クリーニングの要望を聞きながら、服の構造をしっかりと理解し、お客さんとメーカーの双方が納得するようなクリーニングの仕上がりを追求していったんです。
 
―― 試行錯誤してたどり着いた、独自のクリーニング方法なのですね! とくにこだわっている点などあるのですか?
金山:
 カチガワランドリーのメンテナンスで最も評価されているのが、オーダースーツのクリーニングです。特に生地が傷みやすく、クリーニングをするのが難しいといわれるオーダースーツですが、ダメージを最小限に抑える超少量洗いや、1点ずつ手作業で服をハンバーにかけて乾燥させる立体静止乾燥、生地の伸び縮みを修正するアイロンがけを導入し、クリーニングを可能に。オーダースーツメーカーからも注文が入るほど、認められた技術になりました。
 

↑1つひとつ丁寧に仕上げを行う金山さん。メーカーやクリーニング職人の元に足を運んで研究し、独自のクリーニング方法を開発したんだそう。
 
―― カチガワランドリーでは「海をまもる洗剤」も販売しているそうですが、どういった洗剤なのですか?
東本:
 まず、汚れには水で取れる水汚れと、洗剤が必要な油汚れの2種類があります。一般の家庭で使われる洗剤は、石油や油の成分が多く含まれており、油汚れを洗剤成分の油で引き離す、つまり汚れを移動させているだけなんです。「海をまもる洗剤」は、油の汚れを細くして水で包むことができるので、衣類に洗剤が残ることがなく、黄ばむ心配もありません。また、洗濯槽や排水パイプを汚すことがないので自然環境にも優しく、服を長持ちさせるのにもぴったりなんです。
 

↑「海をまもる洗剤」500ml 2,800円(税別)。100回分も使えてリーズナブル。
 
―― 環境にも服にもいい洗剤なんですね!洗濯に関するイベントにも関わっているとか?
東本:
今は小学生やママさん団体に向けた環境教育の一環として、正しい洗濯の仕方や洗濯排水が及ぼす自然への影響などを教えています。今後は、店舗でも常連さんや環境に興味のある人に向けてイベントを開催する予定です。
 
―― さまざまな取り組みを行っていますが、今後はどんなことをやっていきたいですか?
東本:
メーカーがこだわりの服を作り、お客さんがお気に入りの服に出合う。そして私たちが服のメンテナンスを行う。そんな好循環のサイクルを生み出すことがメーカーとユーザーにとって身近な存在である私たちの使命だと感じています。メーカーにお客さんの要望を伝えたり、メーカーの思いをお客さんに伝えたりと、メーカーとお客さんをつなぐ架け橋になるのが今後の目標です。
 

 
 

独自にこだわったクリーニング方法をはじめ、エシカルファッションや「海をまもる洗剤」の販売まで、幅広く挑戦するカチガワランドリー。エシカルファッションという言葉が浸透する中、クリーニング店ならではの取り組みが今後もますます注目を集めそうです。
 
(文:岩井美穂)
 

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