2022年9月・10月の3連休、名古屋駅近くの商業施設「KITTE 名古屋」前に突如出現した漆黒の巨大トラックが話題に。看板も掲げられていない謎のトラックの正体は、9席のみ設えられた移動式酒室「ブラックボックス」。20人ほどの蔵人「ファントム=“姿なき醸造家集団”」があらゆる枠組みを超えて追及した日本酒を、真っ暗な茶室のような空間で楽しめるという、唯一無二の空間です。ファントム代表の日本酒アーキテクト・山本将守さんに、ファントムやブラックボックスについてお話をうかがいました。
山本将守さん
24歳で両親の酒店で修業し、自営業の店舗を引き継ぎ法人化。酒店という流通だけでなく、手がけた「純米酒専YATA」は日本酒立ち飲みブームをけん引し、日本酒業界の革命児として知られる。世界唎酒コンクールでは決勝に進出し、ファイナリストに選出。マーケットを作り上げるビジネスにも注力し、新しいビジネスモデルを考案している。
山本将守さん
24歳で両親の酒店で修業し、自営業の店舗を引き継ぎ法人化。酒店という流通だけでなく、手がけた「純米酒専YATA」は日本酒立ち飲みブームをけん引し、日本酒業界の革命児として知られる。世界唎酒コンクールでは決勝に進出し、ファイナリストに選出。マーケットを作り上げるビジネスにも注力し、新しいビジネスモデルを考案している。
蔵人が酒蔵を超えて日本酒を作るというのは、とても珍しいことですよね。
山本さん(以下、敬称略):
そうですね、普段なら蔵人は自分たちの蔵の酒しか作らない。でも、いろんなしがらみがあると、冒険できなくて、一線を超えることができない。だから匿名にして、本当に追及したいものを「ファントム=幽霊」の影に隠れて、存分にやっちゃおうというのが「ファントム=“姿なき醸造家集団”」です。
常識を超えることで、かつてない日本酒が生まれる?
山本:
そう、そして、いつ現れるか、どこに現れるか、どんなことが行われているのかも煙に巻いて。そんなファントムの魂を宿す場所として選んだのが、9席だけの移動式酒室「ブラックボックス」なんです。
(茶室のように身をかがめてトラックの中へ…)想像以上に真っ暗ですね。
山本:
人の心って、こういう感じじゃないですか。人によっていろんな色にも見えたりして、形がなくて。
入ってすぐは驚きましたが、不思議と心が落ち着きます。
山本:
日本酒の銘柄やいろんな概念など関係なく、向き合うのは自分。禅の精神ですね。この空間を言葉にするのは難しいけど、まずは経験して感じて、自分の言葉で考えてほしいって思うんです。
なにが、どのように始まるのか、お聞きしてもいいですか?
山本:
はじめにロウソクに火を点け、それがひとつのスイッチとなって、畳や吉野杉のテーブルに触れる感覚、日本酒で嗅覚や味覚に訴えていきます。
そして、日本酒のみのコースが始まるのですね。
山本:
日本酒は、蔵から自由になることで生まれた、「まだ誰も醸したことのない」「まだ誰も飲んだことのない」もの。今回は、四季をイメージして作り、酒器も自分たちが心から良いと思うものを作り、魂を震わせる1杯を目指しました。
プロジェクトにはAK-69さんも参画しているとか。
山本:
ファントムの想い、蔵人たちの熱い意志に共鳴して、ブランドのPVやテーマミュージックの制作ディレクションを手がけてくれています。
11月には台湾でもブラックボックスを展開されたそうですね。
山本:
SNSを通じてオファーをいただき、「2022台北国際酒展」にブラックボックスで提供したAK-69とコラボした純米大吟醸「陸/玖」、純米大吟醸「SHIKI」を出展しました。ファントムプロジェクトでは国外初進出となります。
今後も、国内だけでなく海外の進出を視野に入れていらっしゃるそうで、活躍を楽しみにしています。
(文:広瀬良子)