織田信長が薬草園を開拓したことに始まり、古くから岐阜県揖斐川町に根付く“薬草文化”。この岐阜の大切な宝物である薬草文化に着目し、岐阜出身、1991年生まれの3人でつくりあげたのが、クラフトコーラ「ぎふコーラ」です。
数種の薬草を使い、実は体にもとってもやさしく風味豊かなクラフトコーラ。後編では、ぎふコーラづくりに関わる地域の人やアドバイザーとなった人気クラフトコーラの生みの親について、また薬草文化を伝えるべく取り組む地域の活動について紹介します。
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tomoさん、薬草農家さんにも支えられて
↑ぎふコーラはキンキンに冷やして炭酸と1:3で割るのがおすすめ。薬草が夏の体を癒してくれます!
↑岐阜市のオーガニック料理専門店「to U」オーナーの片山治さんが、ぎふコーラ開発の発起人。
ぎふコーラをつくるきっかけになったのが、片山さんが以前働いていた飲食店で取り扱っていたクラフトコーラ「ともコーラ」。その生みの親である調香師のtomoさんは、現在ぎふコーラのアドバイザーとして参画しています。
「私たち3人だけでは、薬草やスパイスの配合バランスがわからなかったので、そこはtomoさんの力を借りて。何度も試作を繰り返しましたが、tomoさんがいなければ商品化に至るまでにもっと苦戦していたと思います」と、ぎふコーラ開発メンバーであり、揖斐川町地域おこし協力隊の泉野かおりさんは語ります。
↑ぎふコーラ開発メンバーの3人。左より、薬草料理店「kitchen marco(キッチンマルコ)~五感で楽しむ伊吹薬草~」店長・四井智教さん、泉野さん、片山さん。
また、揖斐川町の薬草農家さんもなくてはならない存在。ただ、地域のリズムを崩すことはしたくないと考えていた3人。薬草はとても傷みやすく、揖斐川町の暮らしに使うにも商品として出荷するにも、時間と手間をかけて乾燥させなくてはいけないのですが、少しでも薬草農家さんの負担が減らせるよう、試行錯誤の末、生の状態で使用することに成功しました。
地域にとって無理なく、息の長い製品となるよう、ぎふコーラにはさまざまな工夫が凝らされているのです。
↑風味豊かですっきりとした味わいのぎふコーラ。パッケージのデザインは、片山さんが東京で知り合ったという岐阜県出身のデザイナーが手がけています。
薬草を身近に感じるワークショップも
さまざまな人に支えられて形になったぎふコーラ。先行して生産第一弾分を届けたクラウドファンディング支援者からは、「苦みがなく飲みやすくておいしい」「次の生産はいつですか?」など好反応だったそう。
↑「一般発売に向けて購入予約を受け付けたところ、予定していた生産数を上回る注文数に!嬉しい悲鳴ですね!クラウドファンディングの応援購入からリピーターになってくれている方もいます」と四井さん。
お客さんの期待を胸に、3人はぎふコーラを作るだけに留まらず、薬草文化の発信にも力を入れています。
↑ワークショップで参加者がつくったというオリジナル薬草コーラ。
「ぎふコーラそのものだけでなく、揖斐川町の薬草文化を知ってもらうために、オリジナルコーラづくりのワークショップや薬草摘み体験も行っています。小さなお子さんが、『あの草がこんな飲み物になるの?』と不思議がる姿が印象的ですね。自然教育の一環にもなれば嬉しいです」。
今後はイベント出店をしたり、片山さんや四井さんのお店で提供したりと、ぎふコーラや薬草文化について知ってもらえる機会を増やしていくそう。
岐阜全域での魅力発信も視野に
↑岐阜県で採集されたという“ギフチョウ”をモチーフにしたロゴシールには、「岐阜の5地域(岐阜・西濃・東濃・中濃・飛騨)を旅するように」との思いを込めて。
基本となるヨモギ、ドクダミ、カキドオシ、ヤブニッケイの4種の薬草以外の原料は、季節によって変えていくとのこと。今後は揖斐川町がある西濃地域だけでなく、岐阜県内の5つの地域の特産物や名産とコラボして、ラインナップを増やしていく予定です。
↑3人が着ている「ぎふコーラTシャツ」などのグッズも販売予定。
揖斐川町で採取した薬草は大阪の取引先でぎふコーラに仕上げていますが、現在、片山さんが2021年9月にオープンを予定している新店の一角を工房にし、一貫生産できるよう体制を整えているそう。
地域おこし協力隊の泉野さんは、地域の人に向けて岐阜県や揖斐川町の良さをPRしたり、自身の揖斐川町での活動を発信したりする「IBIGAWA BOOK」も制作。地域の人と歩幅を合わせるための努力も忘れてはいません。
2021年7月中旬にいよいよ一般発売開始となり、これからの歩みにますます期待高まる3人。「ぎふコーラが、岐阜の魅力と揖斐川町の薬草文化を未来につなぐとともに、地域の人の思いがギュッと詰まった名産品になっていけばうれしいです」。
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(写真:岩瀬有奈 文:佐藤奈央)