今の時代に合った神棚を自宅で気軽に祀ることができるように、との思いから誕生した「GIRIDO(ギリド)」。木地師(神仏道具などの木工製造を行う職人のこと)をルーツにもつ、木工職人の福井賢治さんが企画。さまざまな手工業品のデザインやブランディングを手掛ける手工業デザイナーの大治将典さん(Oji & Design)がデザインを起こし、さらにお祖父さまの代からお付き合いのあった宮大工の小保田庸平さん(唐箕屋本店)が製作を担いました。
3人のモノづくりに対する思いが結集したギリド。お客様からの反応や次なる展望について、発売元であるウッドペッカーの福井賢治さんに伺いました。
ギリドの特長や誕生秘話など前編はこちら
木地師の家系の福井さんが神棚を作る理由
「今の家のインテリアに合わないから」という理由で神棚を祀らない家庭が増えていることを危惧していた福井さん。宮大工の小久保さんも仕事を通じて、神事などの伝統行事が廃れてしまうのではないかとの危機感を持っていました。
↑神棚をはじめとした、神仏にまつわる道具類の制作を昔から考えていたという、ウッドペッカーの福井賢治さん。
ウッドペッカーの代表作といえば「いちょうの木のまな板」。「最初は『まな板でうまくいっているんだし、神棚は福井さんが作らなくてもいいのでは』と大治さんに言われました」と福井さんは振り返ります。
しかし正しい知識や作法に則った本物の神棚を作ることは、祖父や父が神輿や神事に使う道具や仏壇の制作に携わっていた福井さんが木工職人としてのキャリアをスタートするときから、心の片隅にずっとあったのです。
↑ウッドペッカーのアトリエには、たくさんのまな板やカッティングボードが並んでいます。
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「場所がないから」「家の雰囲気に合わないから」という理由で神棚を祀る文化を途絶えさせてはいけない。使命感にも似たその思いを頼りに、本物の素材と作り方を採用しながらも、今の住宅デザインや家の広さ、間取り、造りに対応できる神棚として、ギリドを生み出しました。
↑神社の扉などに使われる「ギリ戸」の技術を取り入れていることから命名。
お披露目では想像以上の高評価が
出来上がってみると評判は上々。ギリ戸の仕組みをはじめ、神事の様々な意味や由来などをお客さんに説明すると、会う人ごとに「そうだったの」「知らなかった」などの声を聞くことができました。その中で福井さんは、「今の若い人たちは、神事に関する作法や意味を伝え聞く機会がないだけで、その興味が失われたわけではない」ということを確信したといいます。
↑展示会などでお客さんの声を直に聞けるのは重要だったそうです。
「中には、ギリドを使いたいからお札を買いました、という方もいらっしゃいました。順番としては逆ですが(笑)、うれしかったですね。そうやって形から入っていくのでもいいと思っています。
例えば神棚に向かって手を合わせる姿を子どもが見たら、それを見た子どもが真似をして、伝わっていく。そうやって文化や伝統をつないでいくということが大事なのではないかと」と文化を繋ぐことの難しさ、大切さを教えてもらいました。
次なる挑戦は仏壇!コンパクト住宅でもOK
画像提供:woodpecker ↑左から、小保田庸平さん(唐箕屋本店)、福井賢治さん(woodpecker)大治将典さん(Oji & Design)
3人の挑戦はまだまだ続きます。次は仏壇「OGAMIDO(オガミド)」を企画・製作中。仏壇も神棚と同じく、どの家にも必ずあって、ご先祖様にお参りしていました。しかし今や仏壇どころか和室さえ作らない住まいが多く、大きくて立派な昔ながらの仏壇を目にする機会は減っています。
↑もうすぐ完成を迎える仏壇「オガミド」。仏壇というと床の間の隣にどーんとあるイメージですが、こちらは本棚にも収まるサイズです。
3人が手掛ける仏壇は、ギリドと同じく現代住宅にあっても違和感のないもの。本棚や家具の上に置いておける、シンプルでコンパクトなデザインです。今年中には完成する予定で、こちらも楽しみですね。
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(写真:岩瀬有奈 文:河合春奈)