
良質な花崗岩(御影石)の産地である愛知県岡崎市で創業から100年ほど続く稲垣石材店。4代目の稲垣遼太さんが、石の新たな価値を提案すべく立ち上げたのが、石を使った器やライフスタイルブランド「INASE(イナセ)」です。
前編記事では、INASE誕生の背景を紹介。後編記事では、工房の製造現場に迫ります。

石の魅力を余すことなく伝えたい
INASEのものづくりについて、「石は、何千万年、何億年とかけて、今目の前にあります。そんな石そのものの価値を伝えることを大事にしたいという思いがあるので、色や模様、質感など余すことなく皆さんの手に触れていただけるようにしたい」と話す稲垣さん。石材店の仕事として墓石などをつくる際は、サイズを揃え、きれいに磨き上げることを大事にしていますが、INASEではあえて、石そのものの風合いを程よく残すことを意識しています。

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場所によって採れる石の色や質感はさまざま。新たな石の開拓にも意欲的です。

1つひとつ石を手作業で削り、理想のカタチに
過去に在籍していた石工さんが製作した石の器をネットショップに出品したところ、レストランのシェフの目に留まり、お店で使う石の器をオーダーされたのがINASEの始まり。現在も、依頼を受けたプロダクトを製作することが多いのだそうです。

工房に足を踏み入れると……
大きな機械音が響き渡ります。




サイズや用途から石を決めることが多いなか、使いたい石が先にあってから、どんな形にしようか?と考えていくこともあるのだそうです。最初に設計図をしっかり作ってから製作に入るというよりは、「大まかに考えて、まず一度作ってみる。サイズや厚み、石の種類によっても、試作の段階でちゃんと加工できるかどうか確認します」と稲垣さんは話します。


墓石や石像の端材もINASEで蘇らせる
石材店として墓石や石像をつくるなかで出た端材もINASEのものづくりに活用。以前までは廃棄していたものですが、端材といえども1つひとつに名前が付いているような立派な石なので、捨てるのはもったいない…! 環境にやさしいのはもちろんのこと、INASEとして新たな命を吹き込むことにより、端材も美しく生まれ変わります。

今後は日常のライフスタイルの中で使えるようなものを、パッケージも含めてINASE発信で商品化していきたいとのこと。稲垣さんと職人さんの感性と技術により生み出されるINASEの今後のプロダクトが楽しみです。
