愛知県西尾市の海岸沿い、美しい景色の中にたたずむカフェ「酵素玄米Labo(ラボ)」。ここで、酵素玄米を家で手軽に炊くことのできる「Labo(ラボ)炊飯器」が生まれました。従来の炊き方に比べて簡単に炊けるというだけでなく、早く熟成でき、べたつかずにパサつかない、ちょうどいい熟成具合を長く持続できる優れもの。そんな「Labo炊飯器」の開発秘話に迫ります。
↑丸いフォルムとシックな色合いがおしゃれな炊飯器。
研究家とエンジニアが手を組んでできた「ふたり家電メーカー」
酵素玄米研究家の吉田美香子さんと超高圧力炊飯器エンジニアの畔柳幹也さんのおふたりで運営する「酵素玄米Labo」。もともと企業で酵素玄米の商品開発を行っていた吉田さんと、超高圧・圧力炊飯器の設計開発をしていた畔柳さんとで立ち上げた会社で「Labo炊飯器」が生まれました。
↑「Labo炊飯器」ができるまでのことを語ってくれた吉田さん(左)。
「酵素玄米が家で毎日食べられたら…」から始まった炊飯器作り
吉田さんが所属していた会社で酵素玄米に携わるようになったことが、炊飯器づくりのきっかけ。玄米には栄養素がたっぷり含まれていますが、消化吸収がよくないことが唯一のデメリットです。それを覆したのが医師の長岡勝弥氏により考案された「長岡式酵素玄米」。もともと胃腸が弱く、玄米を食べたくても食べられなかった吉田さん。消化がよくておいしい「長岡式酵素玄米」との出合いは衝撃だったといいます。しかし、当時は圧力鍋と高温熟成させるための業務用ジャーでしか本格的な酵素玄米を炊くことはできませんでした。器具が重いことに加え、2時間つきっきりで炊き上げないといけないという手間から、続かないという現状も。酵素玄米は毎日食べてこそ健康につながるものです。「世の中にないものを作りたい」が吉田さんのポリシー。そんな吉田さんが「毎日家で酵素玄米を炊ける、現代のライフスタイルに合った炊飯器を作ろう」と思い立ち、炊飯器づくりが始まりました。
↑もとはエンジニアとして勤務していた畔柳さん(右)。小さな会社に所属していたからこそ、設計・開発・製造・修理まで幅広くやってきたことが生かせたのだとか。
2つの機種を経て誕生した「Labo炊飯器」
実は「Labo炊飯器」ができるまでには2つの機種が存在していました。1つ目は「酵素玄米Pro」。おふたりが企業に所属しながら業務提携して作ったもの。畔柳さんの所属する企業で作っていた発芽玄米用の炊飯器をベースに製作しました。しかし、メーカーの都合により生産数は300台のみ。そこで新たに製作したのが「酵素玄米Pro2」。こちらは、吉田さんの要望を詰め込んだ商品。酵素玄米を事前に水に浸したり、発芽させたりすることなく、洗ってすぐに炊いてもやわらかく炊き上げることのできる技術が評価され、酵素玄米炊飯に関する特許(発明者)も取ることができました。
↑ボタンひとつで簡単に炊飯ができる「Labo炊飯器」。
おふたりが新たに会社を立ち上げてから開発したのが「Labo炊飯器」。自身が過去に取った特許に抵触してはいけないという、なんとも難しい状況の中完成しました。「Pro2には酵素玄米をやわらかく炊ける最高の技術がありましたが、権利は前職の会社にあります。特許に抵触しないというマイナス発想ではなく、過去の商品を超えるいいものを作ろうというスタートで、炊飯、保温のプログラムを開発しました」と吉田さん。Pro2では4合炊くのに105分。世界で一番早く炊ける画期的なものでしたが、「Labo炊飯器」ではさらに早く、さらにおいしくを叶えました。
↑ふたを開けると酵素玄米独特の香ばしい匂いが。
超高圧力で温度と水分管理が徹底された炊飯器
酵素玄米を炊くにあたってとても難しいのが、熟成時の温度管理。保温の温度が合わないと雑菌が繁殖してしまうことも。「Labo炊飯器」では熟成時の保温の温度と水分管理を自動で調節。好みの味わいに合わせて炊くことができます。炊きたては噛み応えのあるさっぱりした味わい、熟成するほどに粒がねっとりとしてきて深みのある味わいへと変わります。玄米だけでなく白米も炊くことができ、古い白米を炊いても新米のようなもっちりとした味わいに。炊くたびに食べ比べができるのも「Labo炊飯器」ならではです。
↑炊きたての酵素玄米。歯ごたえが楽しい、さっぱりとした味わい。
↑左が熟成3日目、右が炊きたて。色も違えば、味も違います。炊飯後、釜に入れたまま自動で熟成できるのが「Labo炊飯器」のポイントです。
業界初の「低温仕込みモード」も搭載
「Labo炊飯器」では、酵素玄米だけでなくパンの発酵、醤油麹・塩麹・甘酒、ヨーグルトなどの発酵食品作りや、コンフィやローストビーフなどを作る際に低温での調理ができる「低温仕込みモード」も搭載しています。「酵素玄米は、発酵食との食べ合わせがすごくいいんです。だからこそ家庭で手作り発酵食品が作れればいいなという思いからこの機能を搭載しました」と吉田さん。他にも甘酒モードや調理モードも搭載し、酵素玄米以外にも活用できる便利な炊飯器になりました。
↑甘酒モードで作った甘酒。約6時間で出来上がり。
酵素玄米の炊きあがりや熟成にこだわりつつ、バラエティ豊かなモードを備えた「Labo炊飯器」。後編では「Labo炊飯器」の構造や使い方、併設されているカフェについて紹介します。開発途中にヒントを得ることとなったカフェの営業についても伺いました。後編記事は10月22日にアップ予定です。
(写真:西澤智子 文:木村望)