インタビュー・モノ

「ものづくり」の背景にあるストーリーを紹介。作り手の想いやこだわりに迫ります。

 
岐阜県と福井県の県境に位置する、人口270人ほどの小さな集落・石徹白。ここでは古くから伝わる服「たつけ」があります。「たつけ」とは、農作業で最も動きやすいようにつくられた野良着です。「石徹白洋品店」では、そんな「たつけ」に長年親しんできた石徹白のおばあちゃんたちから教えてもらい、現代の生活にフィットする服を手掛けています。
 

 

「石徹白の人々が長い歴史の中でつくり上げ、使い続けてきた服を残したい」そう話すのは、2012年5月に1人で石徹白洋品店を立ち上げた平野馨生里(かおり)さん。以前はアパレルとは異業種の仕事をしていた平野さんは、2007年に石徹白を訪れたことをきっかけに移住しました。「石徹白の風土や人々に魅力を感じて、ここに住みたいと思ったんです」とほがらかに語ります。

住んでみて感じる自然と人々の心の豊かさ

 


↑木々が生い茂る緑豊かな自然に囲まれた「石徹白洋品店」。
 

平野さんが2008年に引っ越して最初に感じたのは、山奥ならではの自然と、石徹白に住む人々の心の豊かさだったそう。「食べ物も服も自分でつくる。それだけではなく、日々の楽しみも自ら生み出していける石徹白の人々に魅力を感じました」と平野さん。小さな集落だからこそ、地域の人々と助け合いながら、コミュニティの絆が深まっていくのだと話します。
 


↑平野さんとともに暮らす羊のマルくんとヤギのアルくん。春にはマルくんの羊毛を刈り取り、服をつくることも考えているそう。
 

石徹白に古くから伝わる野良着「たつけ」

 
平野さんは石徹白洋品店を開いて間もなく「たつけ」という伝統的な野良着の存在を知ったそう。たつけのつくり方を教わったのは石徹白に住む80代のおばあちゃん。「50年近くも前につくったきり」と話しながらも、布の裁断方法や寸法まですべて記憶していたのだとか!そのおばあちゃんの教えをベースに、現代でも親しんでもらえるデザインに仕立てています。
 

↑ナチュラルな着こなしにぴったりな「たつけ」。
 

「たつけは私が知っている服の中で、裁断時に布が余らず、最も生地を無駄なく使ってつくられている服だったんです」。曲線で手掛ける「洋服」とは違い、“直線断ち・直線縫い”の和裁の手法を用いてつくられるたつけ。直線で裁断するため、布が余らずエコなんだそう。それでいてお尻の部分はゆったりと、裾は絞られていて動きやすいデザインです。石徹白洋品店ではそんな昔ながらのパターンのいいところはそのままに、こだわって選んだオーガニックコットンの生地を使ったり、自分たちで草木染や藍染を実践したりして、現代のライフスタイルに馴染むようアレンジしています。
 

おばあちゃんが紡いできた服づくりを現代に

 

↑たつけよりもゆったりとした「はかま」。破れやすい箇所はマチ布で補強するという昔からの知恵を取り入れています。
 

野良着にはたつけのほかに、合羽代わりに着物をたくしあげて穿いていたワイドパンツ「はかま」や、石徹白のおばあちゃんのズボンを復刻させた日常着「かるさん」なども。また、オーガニックコットンのワンピースやシャツなども製作・販売しています。肌荒れで市販の服を着られない時期があったという平野さん。柔らかな素材を使用することで、肌が弱い人でも安心して着られるように工夫しています。
 

 

↑木の温もりにあふれたお店の2階にも商品が。
 

庭で育てた草木で染める美しさ

 
肌に優しいのは布だけでなく、染める素材も。石徹白洋品店の服は、平野さんが自身で育てた“藍”や石徹白で自生する草木を使って染め上げます。化学染料を一切使わないため、着る人はもちろんのこと、染め作業を行う作り手にもとっても安全です。
 

↑淡い色合いが素敵な草木染のオーガニックコットンシャツ。

 

↑藍染したシャツワンピースを日に当てて乾燥。
 
長年紡がれてきた伝統服をベースに、草木や藍でナチュラルかつ現代風にアレンジされた石徹白洋品店の服。後編では草木染や藍染の製作風景を覗いていきます。
 
 
(写真:岩瀬有奈 文:壁谷雪乃)

 
 

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