60年以上変わらぬ製法で受け継がれる純国産100%の菜種油 【ほうろく菜種油】後編

前編はこちら
 
product_23_1
 
先代の大嶽喜八郎さんのもとで油作りの技術と熱い想いを受け継ぎ、「ほうろく菜種油」を自分の手で作っていくことになった杉崎さんですが、そこにはひとつ大きな問題が――。
 

product_23_2
工房内に飾られていた先代・大嶽喜八郎さんの写真。目に入るたび、身が引き締まるそう。

 
原料が手に入らず、自ら菜の花を育てることを決意
 
「油職人として家族を養っていくには、最低でも年間20tの菜種を集めて油にする必要がありましたが、後を継いだ時点で、原料で仕入れられる菜種は年間たった500~600kg程。当時、日本では青森県上北郡横浜町か北海道滝川市滝川町くらいにしか生産者がおらず、そのほとんどが企業との契約栽培。分けてもらうことなどできず、地元・西尾市周辺の農家さんに作ってもらえないかお願いしに回りました」。しかし、返ってくる返事はすべてNO。それでも杉崎さんは諦めず、5年間足を運び、頭を下げ続けたそう。「渥美半島や知多半島などで『菜の花エコプロジェクト』の活動をしているNPO法人等から菜種を分けてもらい、西尾市に自ら菜の花を植え始めました。そうした僕の姿を見て想いが伝わったのか、協力してくれる農家さんが徐々に増え、活動を始めてから6年後には菜種を年間24t集めることができるようになったんです」。
 

product_23_4
東浦インターチェンジすぐにある契約農家の菜の花畑。今では契約農家は20人にまで増え、安定して菜種を収穫できるようになったそう。

 
お客さんの顔を見て、おいしさを直接伝える
 
いざ原料が集まって商品を作っても、一般的なサラダ油などに比べて値段の高い「ほうろく菜種油」はなかなかお客さんに手にとってもらえなかったのだとか。そこで自ら売りにいくことに。「道の駅にテントを張り、コロッケを揚げて試食販売をしたこともあります。皆、試食はしてくれても『油なのに高い』と言ってその場を離れてしまう。でも嬉しいことに、試食をした人の多くが、戻ってきて『おいしかった』と伝えてくれたたんです」。そうした地道な活動から「ほうろく菜種油」のおいしさが地道に伝わり、今では全国へと広まったのです!
 

product_23_3
この圧搾機は今では日本に3~4台しかない貴重なもの。丁寧に管理し、大切に使っています。

 
少しでも多くの人に菜種油を届けるという使命感
 
「油作りを始めた頃は、儲かるわけがないと周囲から反対もされましたし、思うように売れない時期もありました。それでも油作りを辞めなかったのは、先代の想いと技術を絶やしたくなかったから。油作りを学んでいた頃、先代の奥さんであるたけ子さんが毎日まかないを作ってくれたんですが、何を食べてもおいしくて。それは、油の質が良かったから。自分は『ほうろく菜種油』の魅力に心底惚れ込み、このおいしさを多くの人に伝えることを先代と約束した。だから、どんなに辛い壁にぶち当たっても、諦めないと決めたんです」。
 

product_23_5
油作りへの道を進んだ杉崎さんを、ずっと隣で支え続けてきた奥さんと。

 
伝統技術を用いた新しい挑戦
 
先代から受け継いだ「ほうろく菜種油」を一途に守ってきた杉崎さんとともに二人三脚で歩んできたのが、「ほうろく菜種油」の販売代理を担っている「りんねしゃ」。愛知県で無添加食品や有機農畜産物、天然生活雑貨などの開発・販売を手がけており、杉崎さんが油を搾る技術を継承する一方、商品開発やブランディングなどに力を注いできました。先代から引き継いだ主軸商品の「ほうろく菜種油 伝承」に加えて、現代のニーズに合わせて杉崎さんとりんねしゃが開発したのが「ほうろく菜種油 荒搾り」と「ほうろく菜種油 生搾り」。「ほうろく菜種油 荒搾り」はパン作りやオイルパスタなどに適した油、「ほうろく菜種油 生搾り」はドレッシングなど非加熱調理向けに作られた油です。また最近では「なたねあぶらRIN」を新たに開発。北海道夕張郡で有機農園「メノビレッジ長沼」を経営し、杉崎さん・りんねしゃと同じ理念をもったエップ・レイモンドさんとコラボレーション。「ほかにも、無農薬の米粉を『ほうろく菜種油』で揚げた天かすや、『ほうろく菜種油』を使ったアイスクリームも5月から販売する予定です。挑戦する姿勢を忘れず、多くの人に『ほうろく菜種油』の素晴らしさを届けていきたい」。
 

product_23_6
右が新商品の「なたねあぶらRIN」。雑味が少ないため、素材の味を生かす繊細な料理におすすめです。(写真提供:りんねしゃ)

 
ほうろく菜種油をおいしく使うには?
 
最後、杉崎さんに「ほうろく菜種油」の魅力が最も生きる使い方を聞いてみると――。「夏におすすめなのは、旬のナスを『ほうろく菜種油』でシンプルに焼く方法。油を吸いやすい食材だからこそ、旨味がより引き立ちます。またアヒージョは、年中楽しめます。エビやキノコなど具材の旨味が油に染み出るから、パンを油に浸して食べてもおいしい。また、残った油でパスタを作ると、これまた絶品! ぜひ一度試してみてください」。毎日愛情を込めて「ほうろく菜種油」を作る杉崎さんだからこそ知るおいしい調理法ですね!
 

product_23_7
春に収穫の時期を迎えた菜の花。今年もまた、杉崎さんの「ほうろく菜種油」搾りが始まります!

 
(写真:西澤智子 文:松本翔子)
 
前編はこちら
 
 

New Report

2026-07-08

TOPICS

金魚が優美に泳ぐ芸術空間「アートアクアリウム展 名古屋2026」7/24(金)~9/23(水・祝)

金魚と光・音・香が織りなす芸術空間「アートアクアリウム展 名古屋2026」が2026年7月24日(金)~9月23日(水・祝)、名古屋・栄にある中日ビルで開催されます。 江戸時代から続く...
桜山風鈴まつり,風鈴,2026,ライトアップ,高山

2026-07-04

TOPICS

カラフルな風鈴が夏を演出「桜山風鈴まつり」7/18(土)~8/29(土)

約2,000個のカラフルな風鈴が彩る飛騨高山の夏の風物詩「桜山風鈴まつり」が2026年7月18日(土)~8月29日(土)、岐阜県高山市の櫻山八幡宮で開催されます。 絵馬殿に風鈴が飾られ...

2026-07-01

HIROBAくんと行く

湖池屋初、中部エリアの工場が岐阜県海津市に誕生!工場見学やマイポテチ作りを体験

ポテトチップスをはじめとするスナック菓子でおなじみの湖池屋。2025年12月には中部エリア初となる中部工場が岐阜県海津市に誕生しました。全国2カ所目となる「湖池屋GOGO!ファクトリー」も併...

2026-06-30

TOPICS

楽曲と紐解く流星群の世界「流れ星を探して feat. BUMP OF CHICKEN」7/3(金)~

名古屋市西区のイオンモールNagoya Noritake Gardenにあるコニカミノルタプラネタリウム楽天NAGOYAでは、2026年7月3日(金)~、BUMP OF CHICKENの楽曲...

2026-06-27

TOPICS

驚きと不思議に満ちた虫の世界「養老孟司と小檜山賢二の虫展」7/11(土)~9/23(水・祝)

解剖学者で大の虫好きとしても知られる養老孟司さん。そして、対象物の全てにピントがあう深度合成技法を駆使し、昆虫写真の新たな可能性を切り拓いた小檜山賢二さん。長年の虫友だちである養老さんと小檜...

2026-06-25

TOPICS

モダンで美しい色使いが魅力「スウェーデン・テキスタイル」7/11(土)~9/6(日)

カラフルで心躍るスウェーデンのテキスタイルにスポットをあてた、日本でも初めての展覧会「スウェーデン・テキスタイル  暮らしと自然に息づく北欧デザイン」が2026年7月11日(土)~9月6日(...

2026-06-20

HIROBAくんと行く

ぴよりんファンの夢が詰まったJR名古屋駅構内のカフェ「ぴよりんvillage」発売15周年の歩みにも迫る

JR名古屋駅構内を歩くと、至るところで見かける“あのスイーツ”といえば……今や名古屋を代表するスイーツと言っても過言ではない「ぴよりん」です。 ぴよりんの世界観を存分に体感できるカフェ...

2026-06-18

TOPICS

モダン・デザインの源流に迫る「アーツ・アンド・クラフツとデザイン│そして民藝」6/20(土)~8/30(日)

19世紀後半のイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動は、産業革命以後の機会化された工場で作られる粗悪な量産品や商業主義を批判して、職人の手仕事による上質なものづくりを見直すとともに、生活と芸...

2026-06-17

シーズントリップ

【愛知・岐阜・三重の工場見学】大人も子どもも楽しく学び、人気商品のヒミツに迫る!

2026年7月から一般公開が開始される湖池屋をはじめ、ブラックサンダー、ヤクルト、キリンビールなど人気商品の製造シーンが見学できる愛知・岐阜・三重の工場見学スポットをまとめて紹介。 無...

2026-06-14

TOPICS

色と色が織りなす表現「JURI KATO exhibition “between color and color”」6/18(木)~29(月)

豊かな色彩表現を活かしたアート作品を制作する、名古屋在住の絵描き・加藤樹里さんによる個展「JURI KATO exhibition “between color and color”」が、2...

2026-06-09

東海ムーブメント仕掛け人

いきものクッキーアートで「可愛い」の先にある物語を届ける【kurimaro collection 杉浦芽愛さん】

三重県桑名市に本店を構える「kurimaro collection(クリマロコレクション)」は、ポップでありながら、細部までリアルに再現した生きものをモチーフとしたクッキーアートを手がける店...
pagetop
もくじ