「ものづくり」の背景にあるストーリーを紹介。作り手の想いやこだわりに迫ります。 インタビュー三重伊勢市

伊勢志摩のパールジュエリーブランド「SEVEN THREE.(セブンスリー)」が手がける、規格外真珠を使ったジュエリー「百花(ひゃっか)」。真円ではない“しっぽ”付きの「金魚真珠」など自然環境に左右されながら生まれる真珠の美しさを、ありのままの姿で届けています。
 
セブンスリーを展開するサンブンノナナ代表の尾崎ななみさんは、三重県伊勢市出身。お祖父さまは現役の真珠養殖職人です。後編では家族で協力し合いながらつくりあげる真珠ジュエリーの裏側を伺いました。
 
前編はこちら→1つとして同じものはない、「金魚真珠」を使ったサスティナブルなジュエリー【百花(ひゃっか)】前編
 
▼もくじ
・家族でつくる、伝えるジュエリー
・伊勢志摩の“白くて真円”の真珠も伝えていく
 

家族でつくる、伝えるジュエリー

 

 
百花だけでなく、セブンスリーで展開しているジュエリーには尾崎さんのお祖父さまや親戚の職人から直接仕入れた真珠を使用。まずは身近な職人の思いを聞いたり話をしたりしながら、安く仕入れる事に注力するのではなく、応援も兼ねて生産者の希望価格をヒアリングしながら購入しています。
 
そんなお祖父さまは現在85歳にして、現役の真珠養殖職人だというから驚き!もちろんご本人のパワフルさもありますが、続けている理由には、養殖真珠業界の現状があるのです。
 

画像提供:サンブンノナナ

↑60年以上、海に出ない日はほとんどないという尾崎さんのお祖父さま。
 
伊勢志摩の真珠養殖業を行っている職人は50~60代が中心。若い層が少なく、後継者不足が課題にあがっています。「私自身も養殖業者としては職に就く事はできず、祖父の代で終了してしまうと思います。そのため、祖父が現役のうちに間近で学び、今後の真珠業界にも活かせる活動をしたい」と尾崎さん。

 

画像提供:サンブンノナナ

↑アコヤガイにわずかな切込みを入れて真珠の核を入れ込む作業は、とても繊細な職人技。
 
養殖を近くで見ているからこそ、真珠ができるまでの背景をもっと伝えていくべきだと感じたという尾崎さん。多くの人が真珠の名前や存在は知っていても、「どこで作られているのか」「どのようにできるのか」「どんな種類があるのか」をといったところまで知る人はかなり少ないのです。「当たり前とされてきた事に疑問を持ち、必要に応じて良い変化は起こしていきたい」と、まだまだ知られていない真珠の魅力を伝えています。
 

↑「百花」で扱う真珠は “白くて丸い”真珠とは異なるため、職人さんたちは当初は売れるかどうか不安だったそう。
 
百花の展開から約2年、「珍しい見た目もそうですが、ブランドの想いに共感してリピートしてくれるお客さんも増えました。もともと買い手がつかなかった真珠が、アイディア1つでここまで売れることに祖父も驚きながらとても喜んでくれています」と、尾崎さんはうれしそうに語ります。
 

↑ジュエリーになった真珠は、一段と輝きを増して見えます。
 

伊勢志摩の“白くて真円”の真珠も伝えていく

 

↑無調色でも白く真円で誕生した真珠を使った「冬花(とうか)」シリーズ。
 
業界内では真珠の調色は当たり前とされていますが、調色をしなくても白色で真円となると、全体の2割誕生するかしないか…。そのため、自然に誕生する“白くて真円”の真珠はとても貴重なのです。
 
セブンスリーには、王道の一連ネックレスなどを揃えた「瑞花(ずいか)」、スタイリッシュで凛とした「冬花(とうか)」をラインナップ。真珠は一年に一度、一番寒い時期に貝から取り出すので冬に咲く花「冬花」をコレクション名にしています。
 

↑冬花の姉妹シリーズとして誕生した百花。
 
そしてこの秋、新シリーズ「月花(げっか)」が登場。真珠は1粒ずつ手作業で入念に確認していると、天然のキズが目立つものや輝きが少し弱い真珠も出てきます。これらは百花や冬花で商品となる事はありませんでしたが、もっと気軽に真珠に触れて楽しんでもらいたい気持ちから、クオリティを明確にしてリーズナブルした別コレクションで展開していくのだそう。数が多くはないため、満月から新月のわずか2週間だけに限って販売。常にはラインナップに並ばないという特別感も、新たな価値になりそうです。
 
1つとして真珠を無駄にせず、世に送り出していくための可能性をどんどん追及しています。
 

↑真珠そのものも、1つとして同じものが生まれないアート作品のよう。
 
さらに尾崎さんは金魚真珠の名付け親として、他の地域とも連携し、真珠業界を支援していこうとしています。
 
セブンスリーは伊勢志摩産のみを取り扱っていますが、日本のアコヤ真珠の最大生産地である愛媛県の養殖業者からも、「伊勢志摩産ではないのですが、金魚真珠をぜひ使ってほしい」とお声がけいただいたそう。「コロナ禍で輸出もストップし真珠の取引も減り、販売に困っている生産者さんたちが金魚真珠の発想を記事で見つけてくれたんです。まだどのように展開できるかは考え中ですが、少しでも支援になればとの思いで新しい取り組みとして挑戦していきます」。
 

 
尾崎さんの手によって命を吹き込まれた金魚真珠は、耳元や首元で生き生きと泳いでいるように見えました。
 
前編はこちら→1つとして同じものはない、「金魚真珠」を使ったサスティナブルなジュエリー【百花(ひゃっか)】前編
 
(写真:岩瀬有奈 文:佐藤奈央)
 

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