「ものづくり」の背景にあるストーリーを紹介。作り手の想いやこだわりに迫ります。 インタビュー幸田町愛知


 
樹脂という素材を知り尽くした愛知県幸田町の自動車関連部品メーカーが生み出した、軽くて割れず、お茶が冷めにくい急須「十年急須」。「お客さまへ良いものを届ける」という、ものづくり企業の信念が製品細部に宿り、デザイン性と機能性を両立させた樹脂製急須ができあがりました。
 
新たな分野で商品を作る難しさや製造工程でのこだわり、今後の展開について、企画から製造までを担う鈴木化学工業所の小幡和史社長と、商品企画の中心となった井下邦之さんに伺いました。

 
◎十年急須の特長や誕生秘話など前編記事もチェック!
>>たっぷり淹れて、好きな時に適温で飲める!軽くて割れないモダンな急須【十年急須】前編
 

▼もくじ
・未経験の「磨き」も社内で実施
・「いいものを届ける」というものづくりの信念
・年配の方へのお祝いに。カラーバリエを製作
 

未経験の「磨き」も社内で実施

 

↑3つのパーツから成る十年急須。
 

「最初は金型作りのコストをあまりかけずに開発を進めていたので、できあがった急須の見栄えが悪かったんんです…」と小幡社長は苦笑。
 
プラスチック製品は基本的に、溶かした樹脂を金型に流し込んで冷え固めた後、型を外して完成。ところが樹脂と金型の相性が悪いと金型を外すときに変形してしまったり、傷がついてしまったりすることがあります。急須の色を濃くすれば傷は目立ちにくくなりますが、「お茶の色が透けて見える」のが十年急須の長所だと考えていた小幡社長は、社内で“磨き”を行い、見栄えをよくすることに。
 

↑現在も使用している十年急須の金型。機械にセットして着色された樹脂を流し込み、固まった後に金型を外します。
 

↑急須の本体部分と底面を接着している様子。
 
「磨き作業を社内ですることは初めて。役員も含め、みんなで作り上げていった」と小幡社長は当時を振り返ります。もちろん、本業である自動車関連部品の製造を行いながらの取り組み。その両立はなかなか大変だったそうです。
 

↑十年使っても飽きないシンプルなデザインも特徴です。
 
透け感を維持しながら、強度へのこだわりも。「ネーミングの由来は、自動車の寿命の基準となる『十年10万キロ』から。急須の『きゅう』と、十年の「じゅう」で韻を踏んでいるし、語呂がいいねと決まりました」。その強度は2階から落としても割れないほど。耐久テストを繰り返しながら、強度と透け感を両立させる製品へと昇華させることに成功します。
 

「いいものを届ける」というものづくりの信念

 

↑製品の元となる樹脂チップ。これを溶かして金型に流し込みます。
 
そこまでして“いいもの”を作ろうとする理由は何なのでしょうか。
 
「ものづくり企業としてのプライドですね。これまでもずっと『いいものをお客さんに届ける』という気持ちでやってきたので、いいものじゃなければ作る意味がないと思いました」。社長のこだわりを、井下さんをはじめとした社員が製品に落とし込んでいきました。

 

↑小幡社長の意見やお客さまからの反応を製品へと反映させ、少しずつ改良を加えています。
 
「いいものを作る」というこだわりは、お客さんの反応にも変化をもたらします。
 
「最初、家族や知り合いに見せて感想を聞いても散々なコメントでした(笑)。『本当にこれが6000円で売れるの?』『安っぽい』などなど…辛辣でしたね。今思えばありがたい意見。そこから改良を重ねていき、『オシャレだね』と言ってくれる人が増えるようになりました」。今ではECサイトやふるさと納税にも取り上げられ、多いときには1日100個売れたことも。 

 

年配の方へのお祝いに。カラーバリエを製作

 

↑6色展開している今でも人気色は白ですが、カラーバリエーションが増えたことでアイキャッチとなり、たくさんの人が手に取ってくれるように。
 
白以外の5色を新たに作ったのも、お客さんの「安っぽい」という意見を受けてのトライです。「高級感を出すにはどうしたらいいかと悩んだときに改めて、商品コンセプトとユーザー層を考えました。
 
コンセプトは“おうち時間を楽しむ”ということ。また、軽くて火傷をしないという特徴から、ユーザーは年配の方を思い浮かべました。そこから、プレゼントに使ってもらえると良いのでは…と連想し、還暦や古希にプレゼントしてもらえるようにしようと6色から選んでいただけるようにしました」と小幡社長。
 

↑5色は和を連想させる「翡翠色(緑)」「瑠璃色(青)」「紫紺色(紫)」「若草色(黄)」「紅緋色(赤)」と命名。還暦なら紅緋色、古希なら紫紺色といったプレゼント選びができます。
 
「お客さまに喜んでもらうために、より良いものを作るための努力を惜しまない」というものづくりへの姿勢は、日本のものづくり産業の発展の源なのかもしれません。現在は、十年急須と一緒に使えるテーブルウェアを企画中なのだとか。早ければ2022年夏頃に登場予定とのことで、こちらも楽しみです。
 
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(写真:岩瀬有奈 文:河合春奈)
 

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