“美しい景色で、ワインのある楽しい時間を”。ぶどう栽培からレストランまで手がける、常滑初のワイナリー【ネイバーフッド オーナー馬場憲之さん】インタビュー


 
愛知県常滑市。晴れた日には伊勢湾に沈む美しい夕日が望める丘の上に、2018年12月、農園やワイナリーを併設したレストラン「常滑ワイナリー・ネイバーフッド」がオープン。愛知県ではワイナリーはまだまだ少数。また、ぶどうの苗木を仕入れて育て、ワインを醸造するまでに最低6年はかかるという労を要する事業!
 
そんな数々のハードルを乗り越え、アメリカのオレゴンで目にした“きれいな景色のなかで、ワインとともに楽しい時間を過ごす場をつくる”という夢を実現した、オーナー馬場憲之さんのもとを訪ねました。
 

 

もくじ

― 開放的な景色が広がる、素敵なロケーションですね! 馬場さんはなぜ、オレゴンに興味を持ったのですか?

 
馬場:小さい頃から好きだったアメリカの映画のワンシーンのような場所をつくりたいという思いが根底にあります。その思いでイチゴ農園やハンバーガーショップを経営していて、次はアメリカといえばワイナリーだ!と。ナパのワイナリーに視察に行くため乗っていた飛行機の機内誌でオレゴンの特集記事を見て、「自分がイメージするのはここだ!」と、急遽行き先を変更。オレゴンのワイナリーを飛び込みでいくつか巡ったのですが、きれいな景色のなか、自分たちが運営するレストランで、自分たちがつくったワインで訪れた人をもてなしている様子に感動したんです。
 

― なるほど!それからは、どのように準備されたのですか?

 
馬場:それまでワインの仕事はしたことがなかったんです。なので、日本国内のいろんなワイナリーで話を聞いたり、そのうちのひとつ、新潟のワイナリーでは草刈りのスタッフとして住み込みで雇ってもらううちに、ワインの樽やボトルを洗わせてもらえるようになり、ワインやぶどうの知識を教えてもらったり。もう、すべてのことに全身全霊をかけました。
 

↑「常滑ワイナリー・ネイバーフッド」のワイナリーにも醸造中のタンクがずらり!
 

― そして、ワイナリーだけでなく、ぶどう栽培までも!

 
馬場:ワインにはテロワールっていう言葉があるように、その土地の空気や水、気候を表現するものなんです。ワインの味を決めるのは9割がぶどうで1割が醸造技術。それならば、常滑で育てたぶどうでつくりたい。オレゴンと常滑では全然気候が違うので、同じピノノワールでも味はまったく違う。でも、違うからこそ、ワインっておもしろいと思うんです。ワイン用のブドウを海外から仕入れるのに2年、ブドウの実がなるまでに3年、ワインを醸造するのに1年。最短でも6年経たないとお金にならない…!悪戦苦闘してここまで来たって感じです。
 

↑馬場さんが手がけるぶどう農園。
 

― ここで育てたぶどうでつくるワインの味は、どんな特徴ですか?

 
馬場:一言でいうと、酸とミネラルのバランスがいい。うちは、サマーワインと呼ばれる、その年につくったワインをその年で飲みきるスタイル。毎年、色も香りも、味も変わります。それがうちのワインのおもしろさかな。常滑焼にも使っているように、常滑は赤土。ミネラルが豊富な土壌でぶどうが育つので、バランスよく仕上がるのかな、と思います。
 

↑自社でぶどう栽培から手がけるのは、シャルドネ、ピノブラン、ピノノワールに加えて、2020年から新たにアルバリーニョも。そのほか岡崎のデラウェアや巨峰を使ったワインもレストランで提供しています。
 
馬場:巨峰のスパークリングワインは、デラウェアの糖を残して甘口に。キンキンに冷やしてシフォンケーキと一緒に楽しむのもおすすめです。ピノブランは今年レモンスカッシュのイメージ。ぶどうの糖度が上がりきる前に収穫して、ちょっとスパイシーになるよう漬け込んでいるので、びっくりするほど酸っぱい。から揚げなどレモンをかけるような料理すべてに合うと思います。ぶどうや醸造でそれぞれ違う味に仕上がるから、おもしろい。準備を始めて10年でレストランをオープン。やっとスタート地点に立てた気持ちです。
 

↑「常滑ワイナリー・ネイバーフッド」レストラン店内。
 

↑ランチメニューも充実しています。
 

― 新しいことに果敢にチャレンジして、有言実行。ここまで来るのに苦労もあったのでは?

 
馬場:やはり6年後にしかお金が入らない状況、何も担保できない状況で、出資者を募って現金を集めたり、農地にレストランをつくるため2年くらいかけて、愛知県で初めて国家戦略特区の認定をもらったり。そうしたら、レストランはいいけどワイナリーはだめということで、農林漁業成長支援機構で認定を求めたり。とにかく無我夢中。でも、自分たちで育てたぶどうでワインをつくり、レストランで楽しい時間を過ごしてもらう。オレゴンで見た感動を、自分の生業にできるなんて、そんなありがたい仕事はほかにないと思っています。
 

↑常滑焼の甕を使ったワインの醸造にもチャレンジ。2020年7月にリリース予定。
 
馬場:ワインってうんちくを語りがちですが、僕が1番大事にしているのは、“楽しいかどうか”。ここで夕日を見ながらワインを楽しんでもらったり、ぶどう農園を散策したり、犬を連れて散歩がてらワインでのんびりしたり。人それぞれの楽しみ方で過ごせるような場になるといいな、と思います。うちの社是は「デリバリングハピネス」。人を幸せにした数しか、自分が幸せになれないと思っていて。たくさんの人に幸せを届けて、社員みんなも幸せになれるのが目標です。
 
 
(文:広瀬良子)

 

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