忙しない日常ですがほっと息つく時間も必要です。生活のなかにそんな「何もしない時間」をつくることを目的に生まれたのが、手のひらをやさしい温もりで癒してくれる陶器製ハンドウォーマー「TETANPO(テタンポ)」。文鳥のかたちをした陶器のなかにあずきを入れてレンジで加熱し、手のひらにのせると…じんわり温かく、リラックスした時間が過ごせます。
デザイナーとともにTETANPOを手がけたのは、愛知県瀬戸市で陶磁器の石膏型をつくる職人、エム・エム・ヨシハシの吉橋賢一さん。さっそくTETANPOが生まれる現場を訪れました。
鳥好き歴15年のデザイナーが愛を形に
あれをしてこれをして…とタスクに追われることの多い日常。そんな慌ただしい生活のなかで、意図して「何もしない時間」をつくることは大切。たとえそれが数分だったとしても、心がスッと落ち着くものです。
そんなときのお供にしたいのがTETANPO。コルクの蓋を開けると中が空洞に。商品に同封されているあずきを入れて電子レンジで加熱すると、やさしい温もりが持続。手のひらにのせてぼ~っとすると、なんとも癒されます。
陶磁器製のTETANPOですが、土を流し込んで成形する際の石膏型をつくっているのが吉橋賢一さん。もともと知り合いだったというデザイナーさんと話をしているなかで、中が空洞になっている陶器にお湯を入れてみたら温かくて感じがよかったというデザイナーさんの経験から、商品企画が持ち上がりました。
かわいい生き物ってなんだろう?といろいろ候補が挙がったなかで、デザイナーさんがインコを飼っていることから第1弾は鳥つながりで文鳥をモチーフに。
インコ愛にあふれるデザイナーさんだけあって形には並々ならぬこだわりがあったようで…。「とくに、頬の膨らみや体の丸みについては何度か試作を繰り返しましたね」と吉橋さん。ポイントは、持ったときに心地よくて、見た目にかわいいと思えるかどうか。また、鳥好きな人も満足できるよう実際の鳥とかけ離れず、かといってリアル過ぎず。
こうして、TETANPO第1弾の鳥の石膏型が決まっていきました。
設計の修正を重ね、辿り着いた形状
背中にあずきを入れる穴があるTETANPOですが、試作段階ではその穴は頭頂部にあったそうです。「通常こういう空洞のものをつくる際には、先端や底に穴を開けるものなんです。なぜかというと、窯元で成形するときに中の余分な土をきれいに取り除くため」と吉橋さん。
ところが頭頂部にコルクがあると、見た目のかわいさが半減してしまったそう。デザイナーさんとも「やはり、頭は丸いほうがかわいいよね」という話になり、空洞の陶磁器ではタブーとされていた“先端部ではない場所”に穴をつくることに!
前例のないデザインへのあくなき挑戦
吉橋さんのところで石膏型をつくったら、焼くのは窯元の仕事。見た目のかわいさを追求し、前例のない“先端部ではない場所=TETANPOでいうと背中部分”に穴を開けるという前例のない挑戦に挑むためには、それに呼応して伴走してくれる窯元がなくては成り立ちません。
「この形状でどうしたらうまく焼けるか。そこを一生懸命考えて、尽力してくれた窯元さんのエネルギーがあってこそ」と語る吉橋さん。
デザイナーさん、吉橋さん、窯元さん。それぞれの思いや技術が重なり合って生まれたTETANPO。2022年9月に販売をスタートして以来売れ行きは好調のようで、月に一度オンラインショップで注文をとると開始30分ほどで600個が完売してしまうそう。冬に限らず年中販売するそうなので、気になる方はチェックしてみて。
(写真:高木志帆 文:広瀬良子)