刃物のまちとして有名な岐阜県関市で、“ダイニングテーブルで素敵に使う”という視点から開発されたナイフ「morinoki(モリノキ)」。手がけるのは、関市の刃物メーカー、志津刃物製作所。前編では「morinoki」の商品第一弾として登場したパン切りナイフの開発秘話を紹介。後編では、そのほかの「morinoki」商品や、魅力ある他シリーズについてもクローズアップ。また、職人さんの真剣な眼差しが光る製造現場にも潜入しました。
↑パン切りナイフのほかに、万能ナイフ、ペティナイフ、チーズナイフ・ソフト、チーズナイフ・ハード、ピザカッターの6種類
テーブルに置くことを想定したからこその、ブレードの秘密
パン切りナイフ以外の商品も、グリップは同じく天然素材のケヤキで、スクエアの形状。「どの商品も、パン切りナイフと同様に、“ダイニングテーブルで気持ちよく使えるもの”ということを意識して開発しました。使いやすさは叶えたうえで、テーブルに置いてあるときの雰囲気を大事にしたんです」とは、志津刃物製作所代表取締役の堀部久志さん。ダイニングテーブルに置くことを想定したことにより、見た目の雰囲気だけでなく、ブレードにも秘密が。
↑代表取締役の堀部さん(右)と、女性目線のアイデアで開発の中心を担っている営業企画の小田美香さん。
その秘密は、ピザカッターやチーズナイフのブレードの角度。「刃物を触ると手が切れるというのは、ある程度の年齢になれば感覚として持っているもの。でもピザカッターやチーズナイフはパッと見たときに刃物の怖さ感がないので、子どもがブレード部分を持ってしまう可能性もある。そこで、角度により切れ味を調整したんです」。手は切れにくく、ピザやチーズなど、目的のものは切りやすい角度。ピザの場合は、具材と生地とで異なる固さにも対応できるよう調整。また、肉や魚や野菜、なんでも使える万能ナイフもダイニングテーブルで使いやすいサイズ感で、ラインアップされています。
↑無垢の木のあたたかさを大切にした「morinoki」シリーズ。
女性と男性、それぞれを対象に考案されたシリーズも
キッチンで使う包丁として、女性の手にフィットするよう開発されたのが「ゆり」。一般的な包丁より少し小さめに設計され、持ち心地も軽く。手にとってみると、料理するのが楽しくなるようなフィット感! また、ブレードを薄く仕上げることにより食材の抵抗を抑え、小さな力でも切れやすくなっています。そして、「ゆり」に対し、男性向けに開発したのが「やまと」。シックなフォルムの内側には、切れ離れの良さなど、使いやすさの魅力も詰まっています。
↑「ゆり」の菜切型。パッケージも上品なので、贈りものにもピッタリ。
↑ブラックのグリップと、ブレードのデザインがシックな雰囲気の「やまと」。
製造現場へ! 機械のメンテナンスにも職人のこだわりが
続いて、製造現場を見学させてもらうことに。工場内には、ブレードを削る機械の音が響き渡り、その前には黙々と作業をする職人の姿が。ブレードの表面の傷を落として艶を消す仕上げは、1mmに満たない細やかな作業。素人が目にしただけでは、削った後と前とで違いがわからないほど!
↑取材時はちょうど「やまと」の仕上げ作業が行われていました。
なお、機械のブレードを削るローラー部分は各自でメンテナンス。“メンテナンスで仕事の効率がかわる”というほど、重要なパーツなのだとか! 膠(にかわ)を塗って、砥粒(とりゅう)で仕上げますが、職人それぞれに、自分が使いやすい配合が違うのだそうです。
ユーザー目線を大切にしたアイデアと、職人さんの緻密で真摯な仕事により、「morinoki」シリーズをはじめ、志津刃物製作所の魅力あるさまざまな商品が生み出されていました。
(写真:西澤智子 文:広瀬良子)