地元の人を巻き込み、情熱を注ぎ続けた
“まちの女将”が感動の映画を支えた!
【クハナ!映画部 部長 林恵美子さん】

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2016年9月3日、全国に先駆けて東海地区限定で公開される映画「クハナ!」。監督は話題作「アンフェア」や「そして、誰もいなくなった(日本テレビ系ドラマ)」の脚本を手掛けてきた秦建日子さんです。「よくある、つまらないまちおこしムービーはつくらない」という監督のポリシーのもと、メジャー感たっぷりに仕上がった映画。舞台となったのは三重県桑名市。いい映画を撮るためには、ロケ地の協力は絶対条件。そう、映画撮影の裏舞台には、地元で結成された映画部の大きな活躍があったのです。映画部部長・林恵美子さん。普段は寺町通りにある小料理店「五大茶屋」を営んでいます。「クハナ!映画部」がどんなムーブメントを起こしたのか、早速直撃しました。
 
 
― 映画のスタッフリスト、拝見しました。林さんのお名前、上から3番目のプロデューサーの部分に記載されていますね。映画業界のプロに混じってのこの位置、すごいことですよね!
 
林:めずらしいでしょ!?映画撮影のプロ集団の中に、地元の小料理屋の女将が!って。「クハナ!映画部」の活動拠点は、「五大茶屋」でした。映画のクランクインが、2016年の3月だったんだけど、前年の9月に映画部が立ち上がってからは、打ち合わせの連続でしたね。

 
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「五大茶屋」は映画部のミーティングスペース。林さんのウキウキするような話し方に心癒され、なごやかムードで打ち合わせが展開される。

 
 
― 実は今回、映画部の立ち位置にとても興味があって取材をさせていただこうと思ったんです。ただのロケ地としての裏方ばかりではなくて、監督のやりたいこと、つくりたいムードを支えながらも、一緒に舵を切って行動している印象を受けたんです。
 
林:いえいえ、毎日しなきゃいけないことをこなしていくことで精一杯でした。一緒に舵を切るなんてとんでもないです。でも、17日間ほとんど毎日朝食のお弁当40人分をつくって、ロケ現場で「今日も美味しかったです」と言われると、疲れも吹っ飛んで、またがんばっちゃうんです。スタッフも日を追うごとに疲れが出てきてるのも分かりますし、明日は果物をつけようかとか、野菜ジュースつけようかとか、色々考えました。
その究極が最終日のお弁当づくり。メンバーのひとりが「付箋紙に私たちのメッセージを書いて、お弁当に添えましょう!」とアイデアを出してくれ、即実行。
最終日の大事な撮影の前、身体はクタクタ…そんな時の私たちのメッセージは、心にしみたそうです。涙している人もいました。
 
― 一人ひとりの顔や取り組み、すべてを覚えていたということですか?
 
林:それはもちろん!せっかく映画に関わるチャンスなんだから自分自身もその映画の魅力を全身で感じなきゃ!って思ったんです。映画部メンバーも思いは同じでした。だから、観客の感動をつくる側の人たちの希望や苦労を敏感に感じ取るようにして、「自分になにかできることはないか」と常に考えていました。
 
― 林さんは、映画メンバーみんなのお母さん的存在というか、人がどんどん集まってきて、場が成長する。その理由はなぜなんでしょう。
 
林:それは私も不思議なんです(笑)。でも、元々映画部ができる前から桑名の町おこしに興味がある人たちが五大茶屋に集まって、月に一度会合を開いていたんです。その土台があったからこそ、映画部を立ち上げることができ、強い結束力となって、製作スタッフ、行政との情報交換のルートもすぐに確立することができたんだと思います。知り合いを通じて秦監督を紹介してもらったり、桑名市に映画について協力してもらうために必要な人脈もその場から生まれたんです。
 
 
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― 映画部が桑名の街に浸透して、理解を得られたのにも時間はかからなかった?
 
林:いえ。それは大変でした。昔からここに住む人は「桑名には方程式がある」と言います。新しいことを始めるには、地域に古くから貢献している人たちにお伺いを立てながら進めないと成功しないと。ちょっと、保守的な街なんですね。だから映画製作を地道にサポートしながら、転機を待ちました。ターニングポイントの一度目は、映画でジャズに初挑戦するクハナキッズたちの練習をサポートしたとき。主役の子以外のクハナキッズたちはみんなオーディションで選ばれたのですが、クランクイン前に曲をマスターしないといけない。その子たちは演技はもちろん、ジャズ演奏は未経験…でも、ちょうど、メンバーに音楽好きで、自宅にスタジオがある人がいて場所を提供してくれたんです。さらに、彼の演奏者の仲間を呼びかけて、子どもたちの演奏の指導をボランティアで協力してくれました。また同じ敷地内にある古民家風の素敵な離れで、キッズのお母さんたちが食事を用意、メンバーもお手伝いしました。噂を聞いた地元の人も頻繁に見学に来られましたね。昨年の9月から3月の撮影に入るまでの8ヶ月間。この準備期間は、キッズにも私たちにも一体感を育むいい時間でした。
二度目のターニングポイントは、クランクアップ直前。市民会館を貸し切っての撮影で、ホールいっぱいのエキストラを集めなければなりませんでした。しかも、運の悪いことに2016年3月31日。世間が忙しい年度末です。でも、ここで結果を出さないと映画部は単なる町のボランティアさんのまま。これまでエキストラに参加してくれた一人ひとりにもう一度声をかけ、とにかく地道に人集めを進めていきました。結果、900余りもの人を集めることができたんです!
 

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左:クハナキッズにとって楽器のトレーニングは一番の壁。練習場所へ出向いて温かい手料理をふるまった林さんたちのビッグスマイルが、彼女たちの心の支えに。
右:林さんは映画部の部長であり、お弁当番長でもあった。撮影スタッフやクハナキッズたちのために、いつもロケ弁はおかずと愛情で埋め、隙がないほどギッシリ。

 
― 街を元気にしたいという思いが、今回カタチになり、映画部も一目置かれる存在になったのですね。林さんにとってこの映画は我が子のような存在なのでは?
 
林:そうかもしれません。今回はキッズが主役だったから母性みたいなものを感じたのかもしれないけど、きっと、それだけじゃない。ひとつの文化をつくるって、子育てみたいなものなんですよね。初めてのことがたくさんあって、立ち上がって歩き出すまでヒヤヒヤの連続。今思えば、そういうことも含めて存分に楽しめました。
 
― 五大茶屋のエプロンママが、ひとつの子育てを終えたと。
 
林:そう!「変えたい」の一辺倒ではなく、「育てたい」と思い、じっくり腰を据えて情熱を注ぎ続けることが、人を動かす秘訣なのかもしれませんね。
 

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「五大茶屋」を入ると、すぐに目に飛び込んでくるのは映画「クハナ!」のポスター。

 
 

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