名古屋で江戸時代から伝わる伝統的工芸品・名古屋黒紋付染(くろもんつきぞめ)。婚礼や葬儀などの式に使われる紋付き袴や着物を黒く染める技術で、黒をより漆黒に染めるには伝統技法や職人の長年の勘、技術が必要です。名古屋市西区で4代にわたって染師が受け継がれている山勝染工。その伝統技術を生かしたアパレルブランドが「中村商店」です。
一般的な黒の洋服を隣に並べるとその差が歴然としますが、“黒が濃いこと”が伝統を受け継ぐ中村商店ならではの特徴。一度目にすると、その黒にすっかり魅了されてしまいます!
前編では中村商店が生まれたストーリーや黒が美しい商品ラインナップを紹介。後編では製造現場に潜入し、“黒の秘密”に迫ります。
黒が濃い秘密、伝統技法「紅下染め」
まずは生地をお湯に1時間ぐらい浸しておいて、不純物を取り除きます。これにより、ムラなくきれいに染めることができるのだそう。
いよいよ黒染めの作業に入ります。
黒以外の染料を配合することで、黒がより黒く染め上がります。
伝統技法では、黒で染める前にまず「紅下(べにした)染め」という紅の染料で生地を染めます。紅は生地の5%ほどの量。職人が長年の経験により、染料の調整を行います。
山勝染工では、黒を高い濃度で染めたのち、水に一昼夜浸してから3回以上水で洗い流します。そうすることで、時間が経っても色褪せない丈夫で艶のある黒に仕上がるのだそうです。
最後、黒い色が出ないほどになったら洗い作業は完了。絹はデリケートなため、引っ張ったりシワができたりしないよう丁寧に水からあげていきます。
乾燥室で乾かします。僧侶の法衣になると1着分が24m!生地をきれいな状態を保ちながらかけていくのも大変な作業です。
長く愛用できる「染め替えサービス」
中村商店では、色落ちしてしまった洋服を染め直して新たな気持ちで楽しむことのできる「染め替えサービス」も行っています。白いシャツをブルーや黒に染めたり、ブルーデニムを黒く染めたりすることも可能。ものを長く大事に使うーーそんなライフスタイルの一役になるといいですね。
また、名古屋黒紋付染師4代目の中村友亮さんは「現在、アジアで民族衣装を普段着としているのは日本だけ」と話し、日本の伝統文化が続いていくよう、日常で着たくなるような着物デザインにも意欲的です。友亮さんがデザインする着物はほぼ1点もの。モダンで斬新な友亮さんデザインの着物に興味があれば、山勝染工に問い合わせを。