インタビュー・ひと

「こんなことしたらおもしろいかも!」を実現した人、また、東海エリアに新たな息を吹き込んだ立役者となる『仕掛け人』にインタビュー。仕掛け人の存在や想いを知ることで、イベントや場所がよりイキイキと目に映るはず!


 
紅葉の美しい香嵐渓があり、江戸時代には中馬街道と呼ばれ宿場を多く有していた豊田市足助町。2011年には愛知県ではじめて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、現在でも歴史情緒香る街並みが残り、訪れる人の心を癒してくれます。
ここで2014年からアートプロジェクト「足助ゴエンナーレ」を手掛けているオオノユキコさんは、CMプランナー出身。芸術と異なる業種にいながらなぜプロジェクトを立ち上げるに至ったのか、アート空間としての足助のまちの魅力は何なのか、オオノさん独自の視点でお話しいただきました。
 

 

↑ オオノさんおすすめのライブカフェ「足助のかじやさん」で取材スタート。足助名物イノシシカレーをいただきながら、トークが弾みます。
 
― オオノさんは、お住まいの小牧市でかつてアートイベントを企画されたそうですね。
 
オオノ:常懐荘(じょうかいそう)アートマルシェというイベントを開催しました。昭和初期の雰囲気溢れる和洋折衷スタイルの建物「常懐荘」が魅力的で、「場所を借りちゃったからには何かしないと!」という、勢いだけで始めました(笑)。私は美大出身ではなく、知り合いにアーティストもいなかったのですが「この作品はコンセプトに合うかな?この人となら思い描いている空気をつくれるかな?」と、自分に問いかけて、自分の視点を信じて進めていきました
 
― 足助ゴエンナーレにも、そのときの経験が生かされているんですね。
 
オオノ:そうかもしれませんね。常懐荘アートマルシェは手探りの感じがとても刺激的でした。たまたま豊田市の方がいらっしゃって、豊田でアートプロジェクトを募集しているのでやってみたらどうかと勧めてくださって、私は足助に縁もゆかりもなかったのですが、アートをもっと知りたくて始めてみることにしました。アートという、「よくわからないもの」が自分に与えてくれるものは大きい。まるで、お気に入りのおもちゃを見つけた子どものような感覚で、足助での活動をスタートさせました。
 

↑ 足助のまちを案内いただきながら、オオノさんおすすめの撮影スポット、マンリン小路へ。漆喰壁が印象的な歴史建築にふれながら進んでいくと、狭い小路にもギャラリーがありました。
 
― 足助ゴエンナーレという名前はビエンナーレやトリエンナーレに似ていますが、「ご縁」という言葉との組み合わせですか?
 
オオノ:ほんとうにたくさんのご縁に支えられてきました。そして、なんにでも「ナーレ」ってつければアートイベントっぽくなるかなと思って(笑)。足助でアートをやるんだぞと一発でわかるように。
1年目は空き家の元料亭「寿ゞ家」をメイン会場として物の怪を意識した多くのアート作品を展示しました。2年目の2015年は「感性の解放区」として五感をテーマにしました。アーティストではないのですが、足助の旦那衆にアートでの参加を提案したところ、「嗅覚と味覚でいきましょう!」と。足助で普通に食べられているイノシシを獲り、さばいて、イノシシカレーをつくり、提供し、“食べることはグロいこと”とメッセージしました。もう、活動そのものが予測不可能なアート。わたしはこのことを「予定不調和」と呼んでいるのですが、あらかじめ計画したことを順調にこなすのではなくて、いろんな人と関わり合いながら進んでいく。そこから広がる可能性を大切にしたいと思っています
 

↑【左上】ドンカジョン(大正と昭和の建物をつなぐ渡り廊下に展示した、時間を表す作品)/2014年、【右上】三浦みのり作品とアーティスト2名(空き家に流れ始めた空気を意識した作品)/2014年、【左下】フジイフランソワ(茶室に九十九髪を描いた作品と足助の山草をインスタレーション)/2016年、【右下】舞台(かつての花街を再現する足助ゴエンナーレならではの様子)/2016年
 
― 「予定調和」ではなく、「予定不調和」ですか!
 
オオノ:私、普段はCMプランナーをしているんです。プランニングが好きで続けているんですけど、ときどき、つくったCMが実際に見た人たちの心にほんとうに届いているかどうか実感がわかず、寂しい気持ちになるんです。とても、遠い気がするのです。CMはお客様のオーダーありきでつくられる商品。アーティスト作品ではない。だから、いつか「みんなの心に届いている実感」のある物事を実現したいという欲求が芽生えたんだと思います。そしてそれは、あらかじめ予測できることや簡単に答えが見つかるものではなく「予定不調和」な取り組みでこそ叶えられるのだと思うようになりました。
 
― 今年の足助ゴエンナーレのテーマは「俳句」だそうですね。ここにも、予測不可能な楽しみが待っているのでしょうか?
 
オオノ:足助で俳句すーる「足助deハイクスール」と名付けました。その後に足助高校開催が決まりました。まさに予想外。ご縁ですね。
俳句って、ごく普通の、例えば朝起きて最初に見た風景などを言葉にするシンプルな遊びなんです。しかもそれは人それぞれでとても自由。だから「足助deハイクスール」はいろんな人が日常で感じた「今」が集まる場になる。みんなの心の中に、どんな「今」があり、それらがどんな集合体を描いていくのか…ちょっと楽しみですよね。
 
― 日常の「なんでもない」と思っていたことの良さに気づく機会にもなりそうですね。
 
オオノ:そう。俳句をつくるときには、いろんな場面を想像したり探したりして、感性を総動員しないといけない。その過程を経ることで、自然と自分を客観視したり、物事を違う角度から捉えられるようになって、最終的には世の中をいつもと違う視点で見ることができるようになると思うんです。大げさ(笑)でも、そういう経験をすることで、たとえば今、仕事で壁にぶつかっている人も、もしかしたら新しい視点で課題に向き合うことができるようになるかもしれない。そんな期待も込めています。
足助deハイクスール当日は、足助のおいしいものを食べて俳句にしたり、ことばを絵にしたり、高校生による俳句バトルを観戦したり、さまざまなプログラムが用意されています。多くの方にとって視点を「スイッチ」できる場になることを願っています。
 

 
 

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