インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。


 
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三重県の老舗鋳物メーカー・錦見鋳造が開発した、薄さ1.5mmを誇る鋳鉄製フライパン「魔法のフライパン」。その軽さだけでなく、鉄と炭が食材のおいしさをググっと引き出す特長は、一流ホテルのシェフやグルメな文化人も愛用するほどの高い評価を得ています。いままでのフライパンの常識を覆す機能は、どのようにして実現しているのでしょうか? 後編では、驚きの薄さを生み出す製造工程についてご紹介します。
 

↑ 薄さ、軽さ、なめらかな表面に秘められた職人技とは?
 

「美しさは細部に宿る」を体現するものづくりの現場とは?

 
「魔法のフライパン」を製造する錦見鋳造には、50年以上にわたり鋳物部品を手がけてきた歴史があります。取引先からのさまざまな依頼に臨機応変に応えてきた日々を経て、高い鋳造技術を確立したと錦見さんは話します。「ミリ単位の誤差もない製品づくり。これを実現する精密な鋳造技術が、製造工程の随所に息づいています」。錦見鋳造のものづくりの真髄が詰まった工場を前に、期待が高まります!
 

↑ 桑名郡木曽岬町にある錦見鋳造の本社。製品開発から製造、出荷までを社内で一貫して行っています。
 

妥協なき職人の手仕事が逸品に仕上げる

 
工場に入り、まず目に飛び込んできたのは立ち昇る炎! 「魔法のフライパン」製造のベースとなる鋳造は、鉄を高温に溶かす工程が必要なため、工場内には熱が充満。原料となる鉄は溶解炉で熱されることで、なんと1,300℃にまで達します。まさに、灼熱の世界! 次に、熱せられどろどろの状態になった鉄は、慎重に鋳型へと注ぎ込まれていきます。鋳型一つひとつに鉄が注がれる度、辺りに舞い上がる炎と火花。「魔法のフライパン」づくりのハイライトに、思わず見入ってしまいます!
 

↑ 鉄の温度や流し込む勢いが製品の出来栄えを左右する「魔法のフライパン」。一切気の抜けない作業です。
 
鉄を流し込んだ鋳型は、時間をかけて冷却されます。しっかりと冷却された鋳型を割ると、中から出てきたのは、くすんだ灰色のフライパン。ここからが、職人の腕の見せどころです! 冷却後のフライパンは職人の手作業により入念に磨かれ、徐々に輝きを帯びてきます。磨き上げられ銀色に輝くフライパンに黒色の塗装を施し、さらにじっくりと焼き上げると「魔法のフライパン」の完成! このように全ての製造工程に人の手が必要となるため、1日につくれるフライパンは100個が限界とのこと。ひとつのフライパンには、時間、熱、職人の手わざが詰まっていることがよくわかりました!
 

↑ 磨きにムラができてしまうと均等に塗装できないため、時間をかけて1本のフライパンと向き合います。
 

いざ世界へ! 極薄フライパンの“その先”を追求していく

 
灼熱の鉄を操り、鋳物職人の熟練の技を駆使してつくられる「魔法のフライパン」。ひとつのフライパンに“さまざまな熱”が込められていますが、なかでも錦見さんの地道な開発・セールス活動を支えてきた“情熱”こそ最もアツいものなのかもしれません。
 
「ここに年季の入ったフライパンがあります。これこそ、魔法のフライパン“第1号”と呼べる試作品です。当時、このまだ厚みのあるフライパンを片手に関西の一流ホテルを訪れ、シェフに一度使ってみてほしいと直談判。高評価をいただくとともに、改善点についてもアドバイスいただいたことが、現在の『魔法のフライパン』を生み出すうえでの大きな励みになりました」と錦見さんは振り返ります。
 

↑ 右が試作段階の「魔法のフライパン」。錦見さんと長い開発期間をともに歩んできました。
 
錦見さんにこれからの目標について聞いてみると、驚きの答えが! 「1.5mmよりさらに薄くすることに挑戦しているんです。今後、アメリカをはじめとした海外市場に進出する際には、よいインパクトのある製品で未開の地へ飛び込みたい。当社がもつ鋳造技術の限界を突破するため、鉄のことをより深く勉強しながら、『魔法のフライパン』をより薄くするためのヒントをひたすら探っています」と笑顔で話す錦見さんは、自由研究を楽しむ少年のようです!
 
職人の飽くなき探求心を糧に、いままさにさらなる進化を遂げようとしている「魔法のフライパン」。近い将来、どのような驚きと感動を食卓に届けてくれるのか、とても楽しみです。
 

↑「魔法のフライパン」の行く末を語る錦見さん。ものづくりに対する真っ直ぐな姿勢が多くの感動を生み出しています。
 
(写真:西澤智子 文:西村友行)
 
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