正解の色なんてない。色彩が無限に広がる、草木染めのストール【百々染(ももぞめ)】前編

product_32_1
 
桜吹雪の中を歩いた穏やかな春の日。
雨上がりの蒸し暑さに額の汗がにじむ初夏の日。
粧う山のごとく鮮やかに染める秋の日。
降り積もる粉雪の中に色を見つけた冬の日。
 
染めたときや草木を採取したときの情景や作り手の想いなど、1枚1枚に異なるストーリーを宿した色彩美しいストールがある。山々に囲まれた岐阜市北部、出屋敷という地区で作られている「百々染(ももぞめ)」です。
 
product_32_2
↑ 染料に使う素材は草木、花、実、果物など。生地はジョーゼット、サテン、楊柳の3種類があります。
 

染料の素材は野山を歩いて採取。ときには種をまいて育てることも

 
ピンクひとつとっても、鮮やかだったり淡かったり、紫がかっていたりと、1枚1枚ニュアンスの異なる色合い。ピンク系統の「さくら」「あさがお」「なんてん」「チューリップ」、そしてピンク以外にも「藍」「ムスカリ」「ヤマブキ」「くさぎ」「さざんか」など、素材は数えきれないほど種類があります。
染料の素材はすべて、この近くで採取されたもの。作り手たち自ら染料の素材を採りに出かけ、染液をつくり、1枚ずつ何度も丁寧に染めていく。四季の訪れやその日の気候や温度を肌で感じながら、ゆっくりとやさしく、手作業により生まれているのです。
 
product_32_3
↑ 種をまいて育てた藍の畑。毎日の水やりも仕事のひとつです。
 
product_32_4
↑ 歩いている途中に見つけたヒメジオンも染料の素材に。
 

“同じ素材でも仕上がりの色が違う”ことを魅力に

 
「百々染」を手がけているのは、いぶき福祉会「第二いぶき」のスタッフや仲間たち。リーダー支援員の山本昇平さんとブランドマネージャーの初瀬尾久美子さんに話を伺うと、「1枚1枚にストーリーがあるのが百々染の最も魅力な点であるのですが、ほかにも特徴がたくさんあるんです」とのこと。
その1つが、同じ素材でも染めた日、染めた人によって色のニュアンスが微妙に違うということ。それは化学染料も機械も使わず、作り手ののびやかな感性を大切にしているため。同じような色味がたくさんある中から、コレ!という好みにピッタリ合う1枚を探せるのです。
 
product_32_5
↑ 左よりスタッフの初瀬尾さん、山本さん。
 
「最初は同じ色になるように染めるのが当たり前だと思っていたんですが、いざ百々染を作り始めると、違うことが魅力になるんだ…と、新たな発見です。作り手も関わるスタッフも自由に楽しく、想像を膨らませながら染めていき、ときには想像を超える素敵な色合いに仕上がることも」と初瀬尾さん。正解の色を1つに決めない分、商品の幅も作り手のワクワクも広がるのだそう。
 
product_32_6
↑ 3枚とも藍で染めたもの。同じ藍でも仕上がりの色がこんなに違うのです!
 

同じものは存在しないからこそ、“365分の1”を選ぶ楽しさがある

 
「作り手、一緒に関わるスタッフ、植物、気候…、いろんなものが掛け合わさって、新しいものが生まれる。そして、それを身に着けてくれる人がそのストーリーを感じとって百々染を大切に使ってくれたらうれしいですね」。
百々染は色で選ぶ以外に、いぶき福祉会の公式サイトでの販売のみ、染めた月日で選ぶことができます。大切な人の誕生日や、両親の結婚記念日など、“365日の中の1日”を大切に想い、贈るプレゼントは、贈る側にとっても贈られる側にとっても特別なものとなりそうです。
 
product_32_7
↑ 月日で選んだ人には表紙に月日が書かれ、色で選んだ人は表紙に桃色、御所染、若芽色など和の色名が書かれたカードが商品に同封。中には染めた日のストーリー、染料の素材、染めた人の名前が書かれています。
 
product_32_8
↑ 商品はカードや写真がこのように同封されて届けられます。
 
「いぶき福祉会」とは、障がい者に仕事を提供し、サポートする場所。その中の「第二いぶき」を利用している障がい者21人とスタッフ14人全員が百々染作りに携わっています。
「僕たちスタッフは、1人ひとりの利用者さん(障がい者)の言葉にできない思いを汲んで、実現するにはどうしたらいいか考えるのも大切な仕事。どんな方法だとやりやすいか、どう染めたいと思っているか、どんな作業が好きか。そういったことも、百々染作りの中に織りまぜていけるようになってきたと感じています」と山本さん。
 
product_32_9
↑ 「いぶき福祉会 第二いぶき」。野山に囲まれたのどかな場所にあります。
 
最初は仕事になんか興味もなかった利用者さんが、“自分の仕事”とやりがいを感じ、社会とつながっている実感を得られる――、百々染はそんな存在にもなっているのだとか。
後編では百々染の制作現場を訪れ、リアルな日常のシーンを切り取っていきたいと思います。後編記事は7月18日(火)にアップ予定です。
 
(撮影:西澤智子 文:広瀬良子)
 
後編はこちら
 

New Report

いきものづくし,名古屋,2026,オアシス21

2026-05-13

TOPICS

楽しく学べる!「いきものづくし 2026」5/30(土)・31(日)

全国から100人以上のいきものグッズ作家が集結するイベント「いきものづくし2026」が2026年5月30日(土)、31日(日)に名古屋市東区のオアシス21で開催。個性豊かないきものモチーフの...

2026-05-10

HIROBAくんと行く

365の季節と出会える庭園「メグラスガーデン ナゴヤ」が名古屋市港区にオープン

名古屋市港区の庭園施設「メグラスガーデン ナゴヤ」が2026年4月にオープン。3年前に営業を終了した「名古屋港ワイルドフラワーガーデン ブルーポネット」をリニューアルオープンした施設で、四季...

2026-05-05

東海ムーブメント仕掛け人

「農と食と人をつなぐ」をビジョンに里山体験やクラフトビールを展開!岐阜県白川町【農LAND BEER・児嶋健さん】

左より農LANDBEERオーナーの児嶋健さん、スタッフで醸造・広報担当のKEITAさん 面積の9割が森林に覆われた岐阜県白川町。なかでも有機農業に力を入れて取り組んでいる黒川地区で、「遊ぼう、...

2026-05-03

TOPICS

郡上おどりデビューや親子におすすめ!「郡上ODORI 2026」5/16(土)、31(日)

7月中旬から9月上旬にかけて約30夜開催される日本三大盆踊りの1つ、岐阜県郡上市の「郡上おどり」がこのエリアでは有名です。そこで、郡上おどりデビューしたい人や、名古屋近郊や岐阜市近郊で手軽に...

2026-05-01

FEATURE

新緑の豊田市・足助散策!森林浴と古い街並み、地元グルメ巡りで心と体を癒す旅

豊田市足助町は、かつて信州(長野県)への中継地として栄えていた宿場町。そして、全国的に知られるもみじの観光名所・香嵐渓がある町です。初夏の香嵐渓は約3,000本のもみじに青々とした葉が芽吹き...
ピーナッツ,チャーリーブラウン,スヌーピー,トムエバハート,イベント,名古屋

2026-04-29

TOPICS

悩める人の心に寄り添うアート「トム・エバハート展」5/8(金)~10日(日)

スヌーピーの生みの親であるチャールズ・M・シュルツが、スヌーピーをはじめとする『PEANUTS™︎』キャラクターを使ってアートを表現することを世界で唯一認めた画家、トム・エバハ...
珈琲回遊,半田,珈琲,イベント,半田赤レンガ建物

2026-04-24

TOPICS

20店以上の珈琲を飲み比べ「珈琲回遊」4/29(水・祝)

東海エリアのコーヒーショップやバリスタが20店舗以上集まり、コーヒーの飲み比べやペアリングスイーツ・フードを楽しめるイベント「珈琲回遊」が、2026年4月29日(水・祝)に半田市の半田赤レン...
ムーミン,トーベとムーミン展,名古屋,松坂屋美術館

2026-04-18

TOPICS

トーベ・ヤンソンの創作世界「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」4/25(土)~6/14(日)

『ムーミン』小説の出版80周年を記念した展覧会「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」が、2026年4月25日(土)~6月14日(日)に名古屋・栄の松坂屋美術館で開催されます。 ...
カレー,イベント,スパイスカレー,名古屋,食べ比べ,人気店

2026-04-16

TOPICS

バリエ豊かなカレーを堪能「TOKAI カレーなるフェス」4/29(水・祝)~5/4(月・祝)

近年人気のスパイスカレーをはじめ、愛知・岐阜・三重の有名カレー店、他エリアのカレーイベントの人気上位店など、30店舗以上が出店する中部地区最大級のカレーの祭典「TOKAIカレーなるフェス」が...

2026-04-14

TOPICS

日本三大山城夜景「岐阜城パノラマ夜景」4/18(土)・19(日)、4/25(土)~5/6(水・祝)

2025年12月に仙台城跡、松山城とともに「日本三大山城夜景」として新たなブランドを立ち上げた「岐阜城」。戦国武将「斎藤道三公」、「織田信長公」が築いたまちの夜景を見渡せる場所として、今後注...
浮世絵,歌川国芳,展,名古屋,愛知県美術館

2026-04-11

TOPICS

奇怪で粋な浮世絵ワールド「歌川国芳展ー奇才絵師の魔力」4/24(金)~6/21(日)

江戸時代後期に活躍した浮世絵師・歌川国芳の全貌に迫る「歌川国芳展―奇才絵師の魔力」が、2026年4月24日(金)~6月21日(日)に名古屋・栄の愛知県美術館で開催されます。 斬新な発想...
pagetop
もくじ