インタビュー・モノ

今、新たな鼓動をもって展開している「東海のものづくり」にスポットを当てて、作り手の想いやこだわりに迫ります。ものづくりの宝庫ともいえる、東海エリア。有名どころから知られざる逸品まで、掘り起こします。


 

森林に恵まれた東濃地方生まれの木工製品ブランド

 
ここに木目が美しい木の板が1枚。波打ったデザインに、白色と茶色が織り成すコントラスト。触れずとも木のぬくもりが感じられる不思議な板は、なんとバスマットなんです。このバスマットは、岐阜県中津川市生まれの木工製品ブランド「tonono」を代表する逸品。木でできているのに水を吸っても、年月が経っても、反り返らない。木工のスペシャリストが手がける画期的な製品です。
 

↑ 色の淡い部分も濃い部分も素材は杉。内側と外側とで異なる色味を生かしています。
 
「tonono」を手がける内木木工所があるのは、広大な森林を有する岐阜県中津川市。本社兼工場に到着すると、目の前には緑生い茂る山々とのどかな田園風景が広がっています。内木木工所は1955年に創業して以来、木工製品づくりに携わってきた老舗企業。木工製品の塗装やオリジナル家具の製造など、木に関わる幅広い技術を生かして暮らしに木のぬくもりを届けています。「tonono」はおよそ3年間にも及ぶ開発期間を経て2011年に設立されました。
 

↑ 高い技術を誇る内木木工所の木工塗装分野は、全国から依頼が寄せられています。
 

きっかけは遊び!? ウェーブデザイン誕生秘話

 
「東濃地方は古くから林業が盛んな地域で、伊勢神宮の式年遷宮の際には当地方で産出される“木曽檜(きそひのき)”が御神木として使用される、由緒正しい林業のまちです。『tonono』は、この誇るべき地域資源・木工文化を後世に残すことを目的としています」と話すのは、内木木工所の代表取締役の内木盛良さんです。バスマットのほかにダイニングテーブルや椅子、ランチョンマット、箸置きがありますが、共通するのはウェーブ状の模様。あらゆるアイテムにシンボルともいえるデザインが息づいています。
 

↑ ウェーブ状のフォルムは、見た目の美しさだけでなく機能性も兼ね備えています。箸置きを裏返すと、フォーク&スプーン置きになるんですよ!
 
いまや全国から注文が集まる「tonono」ですが、その独特なデザインはどのようにして閃いたのでしょうか? 「9年ほど前に遊びで無垢の木をウェーブ状にカットし貼り合わせ、2ヵ月ほど放置してふと見てみたところ、そのままの状態を維持していることに気づきました。一枚板の無垢材であれば吸湿と乾燥を繰り返すうちに反り返るのが常識なので、とても驚きましたね」と内木さんは振り返ります。大学に研究を依頼したところ、ウェーブ状に木をカットする際に一直線に連なる繊維が断ち切られるので反り返らないとのこと。斬新なデザインの発見が偶然の賜物だったなんて驚きですね!
 

↑ 「tonono」設立やバスマット開発のエピソードを話す内木さん。
 

森林資源、職人技。東濃地方の魅力を「tonono」に込めて発信

 
ウェーブ状の板をどのように生かすか。内木さんは中津川市で豊富に産出される杉の「吸水性」と「肌触りのいい滑らかな質感」を生かし、バスマットを開発することに。杉は水を吸ってもすぐに乾燥する特性があるためバスマット素材として最適で、さらに濡れるとリラックス効果のある杉の香りが漂うというおまけつき。手入れも簡単で、軽く拭いて陰干しするだけで長期間清潔な状態で使い続けることができます。
 

↑ 左側にあるものが3年ほど愛用しているという内木さんのバスマット。使うごとに深まる木の風合いも楽しみのひとつです。
 
『tonono』の製品には、すべて東濃地方で採れた木を使用しています。ひとりでも多くの人にバスマットをはじめとした『tonono』の製品を通じて、東濃地方の自然・木工文化の素晴らしさを知っていただければと思います」と内木さんは笑顔で話します。
後編では「tonono」のバスマットを製造する工房に伺い、製造工程や製品に込められた職人の細やかな心づかいを紹介予定。併せて、「tonono」をきっかけに興るまちの変化についてもスポットを当てます。後編記事は8月11日(金)アップ予定です。
 

↑ ウェーブ状の製品はこんなところにも!「tonono」の進化はまだまだ続きそうです。
 
(撮影:西澤智子 文:西村友行)
 
後編はこちら
 

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