雪の結晶のように美しい、釘を使わず木を組み付ける伝統技【組子コースター】前編

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雪の結晶がはらはらと舞い降りてきたかのような美しさ。これは日本の伝統産業で、かつては家屋の障子やふすま、玄関を入ってすぐの上がり端に使われることの多かった「組子(くみこ)」の技法を生かして作られたコースター。組子とは、一本の材木からわずか1.5mmほどの木片に切り分け、釘や接着剤などは使わず、切り込みやほぞ(木材を接合するための突起)を施すことで組み合わせ、意匠(模様)を作り出していく職人技。手がけるのは、三重県三重郡菰野町で三代続く「指勘(さしかん)建具工芸」。目を奪われてやまない美しい造形の組子! その魅力を探りに、一級技能士である指勘建具工芸三代目・黒田裕次さんのもとを訪れました。
 
木で綿密に作られた、アートのような組子建具
 

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黒田さんの自宅で障子に施されていた組子。裕次さんの父親である二代目・黒田之男さんオリジナルのデザインで、お釈迦様の後光が放射線状に広がっているのをイメージして作ったのだそう。

 
伝統的な意匠はあるけれど、それだけにとらわれない。基本、組子の建具はお客さんから「こういうデザインで作ってほしい」と抽象的なイメージ、もしくは具体的な絵柄のオーダーが入り、その期待に応えるべく、伝統的な意匠や、ときに新たなデザインを生み出し、組み合わせながら作っていきます。今まで作ったことがないようなチャレンジングなデザインオーダーもあるのですか…?との問いに、「結構ありますよ。父親はそういう場を数え切れないほどくぐってきた。その都度、考え、工夫する。そこで、新たな技術や意匠が生まれることが多いんです」と黒田さん。伝統の技術を継承していくだけでなく、新たな技にも挑んでいかなくてはならない厳しい世界です。
 

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お客さんのオーダーにより生まれた曲線の意匠。組子で曲線を描くのは至難の業。指勘建具工芸ならではの技術です。

 

大小の輪を木製チェーンでつないで連動させた動く組子。これも黒田之男さんによるアイデアです。2015年に行われた「ミラノ国際博覧会」にも出品されました。
 

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2016年の「伊勢志摩サミット」の贈呈品として、指勘建具工芸が「文箱」を制作。「輪継ぎ(わつなぎ)」という意匠は、世界をつなぐという想いを込めて。

 
 
組子建具の需要が低下。そこで始めた、“伝える努力”
 
伝統的でありながら、モダンな雰囲気も醸し出す組子。現代でも、和モダンテイストや古民家風の建築のアクセントとして、組子を取り入れたいというニーズがあるそう。それでもやはり、木造建築が減ってきたことで需要も低下。そこで黒田さんの代から意識しはじめたのが“伝える努力”です。「2009年から『まちかど博物館』に参加し、この地域の地場産業を巡るツアーに組み込んでもらったんです。まずは組子ってどんなものかを見て、体験してもらう。そうした“伝える努力”を発展させ、より日常に使える組子を!と開発したのが『組子コースター』です」。
 

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「柔軟な発想の持ち主である父親にはまだ届かない。制作に関しては、今は父親の技術に追いつくことに精進しています」と語る、黒田さん。

 
 
薄くて繊細でも、組子の意匠をたたえた「コースター」
 

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「組子コースター」2,000円。模様については、左から/麻の葉、桜亀甲、ねじぐみ。

 
組子コースターのデザインは全部で6種類。何をモチーフに模様が作られているのかを尋ねると、「建具の組子に使われている伝統的な意匠です。“こどもが真っすぐに成長しますように”との想いを込めて産着の模様にも使われる麻の葉や、縁起物の亀甲。昔から縁起の良いモチーフが使われることが多いんです」。
建具に比べると、かなり小さい。ひと回り大きいだけの鍋敷きと比べても、これだけ薄さが違います。
 

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左が鍋敷き、右がコースター。

 
「組むときにピンセットを使ったりと、繊細な作業となります。小売りだとある程度スピードをもって仕上げていく必要があるので建具ほどの手間暇はかけられないけれど、多くの人に組子を知ってもらう入口になるかもしれないので下手なものは作れない。そのバランスに気を配りながら制作しています」。
「建具の展示会はプロ向けだし、一般の人にはまだ組子の存在を知られていない」と話す黒田さん。その橋渡しともいえる役割を十分に果たしてくれそうな、美しい存在感を放つ「組子コースター」。コースターとしてはもちろん、オーナメントや小物置きに使ってもステキだと思いました! 後編では、黒田さんの自宅からほど近い、菰野富士の麓にある工房で拝見した制作風景を紹介したいと思います。
(後編は2月22日アップ予定)
 
後編はこちら
 

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