「武道」の精神を宿す、強くてしなやかな、刺し子生地のバッグ 【sasicco(サシコ)】前編

product_20_0
 
シンプルでおしゃれなこのバッグ、実は只者ではない!?
 
もうすぐ4月、徐々に暖かくなってくるこの季節、外へ出かけるのも楽しみになります。そんな時には気分一新、新しいバッグでお出かけするのもいいですね。そこで編集部が注目したのが、愛知県豊川市で生まれた、「sasicco(サシコ)」のバッグ。シンプルなカラーに女性らしいふんわりとしたフォルム。そんな「sasicco」ですが、そのゆるやかな佇まいには意外な秘密が! なんと、柔道や剣道の道着と同じ素材「刺し子織り」でできているのです。「刺し子織り」とは、平織りの生地に、同色または様々な色の縦糸・横糸を浮かせて模様を織り出した織物。一見シンプルですが、よく見るとさりげない模様が味わい深い。さらに、動きの激しい日本武道に用いられている素材ということは強度抜群。「シンプルなものこそ、流行に左右されず長く使いたい!」という人にぴったりです。それにしても、道着の素材がバッグにもなるなんて…、見れば見るほど驚きです。
 

product_20_1
「sasicco」のポイントは無垢な白さ。やさしい雰囲気が魅力です。

 

product_20_2
剣道に用いられている道着。耐久性だけでなく衣類としての柔軟性も持ち合わせた素材です。

 
創業96年! 老舗道着メーカーが踏みだした未来への一歩
 
「sasicco」を手がけているのは、愛知県豊川市で長年にわたり道着を製造するタネイ。1921年の創業以来、三河木綿を使った「刺し子織り」を素材とした剣道や柔道、空手道の道衣を製造しています。注目すべきは、そのチャレンジ精神! 創業時には、当時手作業でつくられていた刺し子織りの機械化に成功。また、1994年にはそれまでの剣道衣の常識を覆す生地の柔らかさと縮みにくさを実現した「バイオ加工剣道着」を発売し、業界の発展に大きく貢献しました。1世紀にもわたる歴史のなかで積み重ねてきた刺し子織りの「技術」と、現状に満足しない飽くなき「向上心」を武器に、現在も道衣業界のトップランナーとして走り続けています。
 

product_20_3
道衣業界の会員証が掲げられている社屋からは、道場のような勇ましい雰囲気が漂います。

 
そんな三河地域の老舗企業が、なぜ道衣を素材としたバッグづくりに挑戦したのか? きっかけについて代表取締役の種井美文さんは、「10年ほど前から刺し子織りを使用した新たな製品づくりに取り組んでいました。いまある人材と設備を活用してつくれるものはなにか? 割烹着や帽子など、様々な製品をつくり模索するなかで、仕事でお付き合いのあった方からいただいた『この素材でバッグをつくってみたら?』という一言。非常に面白いアイデアでしたので、挑戦してみることにしました。バッグに関してはまったくの素人。社員一丸となってのゼロからの挑戦でしたね」と話します。
 

product_20_4
種井さんはバッグ製造にいたる道のりを熱く語ってくれました。

 
バッグ製造を通じて見えた光明。そしてブランド設立へ。
 
バッグという未知の世界。その新たな挑戦を、自慢の製織技術と種井さんをはじめとしたスタッフのアイデアで生かし、少しずつカタチにしていきます。「バッグのデザインに関しては手探り状態でスタートしました。そこで参考にしたのが『女性スタッフの意見』。見た目だけでなく、使いやすさや持ちやすさなど、ユーザー目線の声をヒントに製造を進めてきました」と種井さん。そして、2008年にトートバッグの制作に成功! 東京の有名百貨店で開催された展示会で好評を博し、その後通販カタログにも掲載され、その人気は瞬く間に広まっていきました。「『sasicco』を販売する取引先様にはたくさんのご指摘をいただきました。相手はファッション業界を知り尽くすプロフェッショナル。すべては、バッグをより良くしてほしいという期待のあらわれだと思い、その期待に応えられるよう改良に励んだ日々が、『sasicco』の礎になっていると思います」と種井さん。
 

product_20_5
ゼロからスタートした「sasicco」は、スタッフの手仕事とアイデアの結晶です。

 
バッグづくりのイロハを学び、技術を高める期間を経て、2010年ついに自社バッグブランド「sasicco」を設立! より多くの人に自慢の逸品を知ってもらうための決断でした。「日本で製織されている耐久性のある天然素材生地といえばデニムと帆布ですが、刺し子生地にはその2大巨頭に割って入れるポテンシャルがあると自信をもっています。丈夫さだけに目がいきがちですが、もともと衣類生地としてつくられているので通気性もばっちり。壊れにくい・蒸れにくい『新しいバッグ』として、多くのお客様に愛される存在になってほしいです」。バッグを手に「sasicco」に込めた思いを語る種井さんからは、100年近くにわたり会社の歴史と共に歩んできた刺し子織りに対する愛情が伝わってきます。
 

product_20_6
三河木綿を使った刺し子織り。防火性も備えていることから、かつては火消し隊のはっぴ素材としても活躍していました。

 
三河地域が誇る伝統技術を生かし、道衣の新たな可能性を切り拓いた「sasicco」。そのシンプルでかわいらしい佇まいには、道衣の新たな可能性を追求するつくり手の武骨な思いが宿っていました。後編では、タネイの工房から「sasicco」の制作風景を紹介します。ひとつのバッグに息づく伝統の技を、ぜひお楽しみに!
 

product_20_7
株式会社タネイさんの社屋。趣きある柱や壁面が、歴史の重さを教えてくれます。

 
後編はこちら
 

New Report

2026-03-20

TOPICS

キャラクター誕生30周年記念「ひつじのショーン展 with ウォレスとグルミット」3/28(土)~5/31(日)

ウォレスに“ショーン”と名づけられて30年。なぜ言葉を話さないショーンが、世界中のファンを惹きつけてやまないのか。その原点となった「ウォレスとグルミット」シリーズの色あせない魅力とは。 ...

2026-03-19

HIROBAくんと行く

初心者もハマる!日本最大級のワインメゾンがジェイアール名古屋タカシマヤに新登場

ジェイアール名古屋タカシマヤ地下2階から直結するファッションワン地下に2025年11月、日本最大級のワイン売場「ワインメゾン」が誕生。「ワインって敷居が高いイメージ」「種類が多すぎて選べない...

2026-03-13

TOPICS

大量絶滅の謎に迫る!「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」3/20(金・祝)~6/14(日)

世界中の研究者が解明に取り組んでいる生命史のビッグファイブの謎に迫る特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」が、2026年3月20日(金祝)~6月14日(日)に名古屋伏見の名古屋市科学館で...

2026-03-05

東海ムーブメント仕掛け人

名古屋の路地裏からZINE文化を発信!【Manila Books & Gift・桂井智彦さん】

近年、各地でフェスが開催されるなど、じわじわと注目を集めているのが、個人や少人数で制作される出版物「ZINE(ジン)」です。名古屋市の路地裏に店を構える「Manila Books &...

2026-03-04

HIROBAくんと行く

舞台裏から見る歌舞伎の魅力!岐阜・中津川の芝居小屋「かしも明治座」

2025年に大ヒットした映画『国宝』をきっかけに、生の歌舞伎を見たいと考えている人も多いのではないでしょうか。岐阜県中津川市にある芝居小屋「かしも明治座」の舞台裏ツアーが、舞台の仕組みを間近...

2026-03-03

TOPICS

親子で楽しめるマルシェ「らいおんの庭」3/14(土)

半田市の西部丘陵地にある緑豊かな公園・半田ぴよログスポーツパークで2026年3月14日(土)にマルシェ「らいおんの庭」が開催。珈琲やお弁当、花、刺繍、子ども服など多彩なジャンルの約50店舗が...

2026-02-28

TOPICS

240の窯元や産地が出展「やきものワールド in ポートメッセなごや」3/5(木)~9(月)

全国各地の職人技が集結!伝統工芸の粋を極めたやきもの職人たちが、こだわりの逸品を展示・販売する「やきものワールド in ポートメッセなごや」が2026年3月5日(木)~9日(月)まで開催され...
ハンドメイド,タフティング,体験,小川染色,一宮

2026-02-20

しょく育

繊維の街・一宮で色彩豊かなタフティング体験!伝統技術で染めた糸で描く世界にひとつのアートを

空前のハンドメイドブームの中、最近注目を集めている「タフティング」。 タフティングとは、タフティングガンと呼ばれる器具を使い、布に手芸糸を打ち込んで、オリジナルのラグやカーペット、タペ...

2026-02-12

HIROBAくんと行く

大河ドラマで注目!名古屋市中村区で豊臣秀吉・秀長ゆかりのスポット巡り

2026年1月にスタートした大河ドラマ『豊臣兄弟!』で注目の高まる名古屋市中村区。中村公園には「豊臣兄弟! 名古屋中村 大河ドラマ館」を中心とした複合施設「豊臣ミュージアム」が1月24日にオ...
ぎょうざ祭り,餃子,モリコロパーク,愛知,イベント

2026-02-07

TOPICS

餃子尽くしの1日を堪能!「全日本ぎょうざ祭り 春 in モリコロパーク」2/21(土)~23(月・祝)

東海エリアをはじめ、全国の人気餃子を一堂に集めた「全日本ぎょうざ祭り 春 in モリコロパーク」が、2026年2月21日(土)~23日(月・祝)の3日間、愛・地球博記念公園(モリコロパーク)...

2026-02-05

TOPICS

江戸時代から伝わる雛飾り「尾張徳川家の雛まつり」2/7(土)~4/5(日)

有職雛(束帯雛)江戸時代 貞徳院矩姫(尾張家14代慶勝正室)所用 徳川美術館蔵 春の訪れを告げる雛祭りの時期に合わせて、江戸時代から近代に至る尾張徳川家伝来の雛飾りが名古屋市東区の徳川美術館で...
pagetop
もくじ